平成22年3月25日
茨城県
J-PARCセンター
国立大学法人茨城大学

有機結晶の中性子構造解析に成功
−J-PARC 茨城県生命物質構造解析装置(iBIX)−

茨城県は,独立行政法人日本原子力研究開発機構と大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構が共同で設置・運営している大強度陽子加速器施設(J-PARC)の物質・生命科学実験施設(MLF)に設置した中性子回折装置「茨城県生命物質構造解析装置(iBIX)」において,国立大学法人茨城大学及びJ-PARCセンターへの委託により装置の開発を行い,この装置による有機結晶の中性子構造解析に成功しました。

iBIXはJ-PARCの強力なパルス中性子源に対応する,新方式の中性子検出器(波長変換ファイバ型2次元シンチレータ検出器)と,新たに開発した結晶構造解析処理ソフト「STARGazer」を備えており,主として茨城県内の中小企業が製作を担当しました(別記1)。中性子を利用すると水素原子や水分子を良く観察できる性質を利用して,医薬品,食品・農産物,有機材料,高分子材料,有機・無機デバイス,有機燃料電池など幅広い産業分野での製品開発や先端的研究への応用が期待されています。

今回,iBIXを用いて3種類の有機結晶の中性子構造解析を試みた結果を,図2,3,4に示します。炭素,窒素,酸素原子と重水素原子の原子核密度を青色で,水素原子の原子核密度を赤色で示してあります。水素原子の結合距離も化学的に妥当な結果であり,十分な精度を持つ構造解析が行われたことを確認しました。

測定に要した時間は3日程度ですが,検出器の増設を計画していることやJ-PARCの出力も増加する予定であることなどから,平成25年頃には有機結晶で半日程度,タンパク質結晶でも3日程度で全データを取得し,構造解析を行うことができるようになる見通しです。今後,J-PARCの出力増加に伴い,より小さな結晶についても測定が可能になり,中性子構造解析を用いた有機分子や生体高分子の研究が飛躍的に進展することが期待されます。

なお,この成果については,3月29日から31日にかけて開催される第1回MLFシンポジウム(会場:いばらき量子ビーム研究センター)において報告される予定です。

以上

参考部門・拠点:J-PARCセンター

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