平成22年3月17日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
京セラ株式会社
日立原町電子工業株式会社

世界最大の高純度セラミックリングの絶縁性能を実証
100万ボルト加速器を用いたITERのプラズマ加熱装置開発が大きく前進

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡ア俊雄、以下「原子力機構」)、京セラ株式会社(代表取締役社長 久芳 徹夫)、日立原町電子工業株式会社(取締役社長 青木 茂)は、国際熱核融合実験炉 ITER[1] で使用するプラズマを加熱し核融合反応を起こさせる中性粒子ビーム入射装置(以下、NBI)において、世界最大口径をもつ高純度セラミックリング(ファインセラミック)を用いたITER NBI用の大型絶縁体を試作し、高電圧絶縁試験を行ったところ、ITERで要求される絶縁性能を世界で初めて実証しました。

ITER NBI用加速器では100万ボルトの高電圧を絶縁するために、セラミックリングを5段重ねにした絶縁体が必要です。この絶縁体の内部では部品を互いに絶縁して配置するため、外径 1.56 m、高さ29 cm、厚さ5 cmの大口径セラミックリングが必要です。しかし、従来の技術で製作できるセラミックリングは外径1 m程度が限界で、@ITER用大口径セラミックリングの製作技術の確立が長年の課題でした。また、このセラミックリングは真空とガスの境界にもなるため、セラミックリングと高電圧をかける金属製リングを接合し、密閉することが必要です。代表的な接合方法は、ロウのように溶かした金属で接着する「ロウ付け接合」[2]があります。小型セラミックの接合には用いられていますが、外径が1 mを超すセラミックリングのロウ付け接合は非常に困難とされており、A接合技術の確立も技術的課題の1つでした。さらに、絶縁体の性能実証では、セラミックと金属の接合部を起点に発生する放電、すなわちB絶縁破壊を抑制する技術の確立が重要な開発課題でした。

そこで原子力機構は、ITER NBI用加速器に向けた以下の技術開発を行いました。

@ 京セラ(株)と共同で、新たな大型セラミックリング成形法の開発に取り組み、世界最大口径(外径1.56 m)の高純度セラミックリングの製作に成功しました。
A 日立原町電子工業(株)と共同で、大きなリング状の接合面にロウを均一に溶け込ませ、また接合面に発生する力や熱による変形を均一にする機器を開発しました。その結果、厚さ3 mmのコバール[3](ニッケル合金)製の接合用金属リングと大口径セラミックリングのロウ付けに成功しました。
B セラミックと金属の電気的特性の違いによりその接合部が放電の起点となりやすいことに着目し、これまでの加速器開発で得た知識と経験を基に、放電を抑制する電界緩和部品を開発しました。

その結果、セラミック1個あたりの定格電圧を20%上回る直流24万ボルトを1時間以上安定に保持することに成功し、ITERで要求される絶縁性能を世界で初めて実証しました。

今回の成果は、ITER NBIの開発を大きく前進させると共に、半導体産業分野や、素粒子物理学の学術分野等への波及効果が期待されます。なお、本成果は平成22年6月10日から岐阜県高山市で開催される第8回核融合エネルギー連合講演会及び平成22年10月11日から韓国の大田で開催される第23回IAEA核融合エネルギー会議で発表する予定です。

以上

参考部門・拠点:核融合研究開発部門

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