■用語解説

※1 大強度陽子加速器施設(J-PARC)
高エネルギー加速器研究機構(KEK)と日本原子力研究開発機構(JAEA)が共同で茨城県東海村に建設した陽子加速器施設と利用施設群の総称。
加速した陽子を原子核標的に衝突させることにより発生する中性子、ミュオン、中間子、ニュートリノなどの二次粒子を用いて、物質・生命科学、原子核・素粒子物理学などの最先端学術研究及び産業利用を行う。
※2 ミュオン
ミュオンは、電子と同じレプトン(軽粒子)の仲間に属する不安定素粒子で、天然には宇宙線として地球に降りそそいでいる。正と負の電荷をもつミュオンが存在し、負の電荷をもつミュオンは多くの点で電子と同じ性質を持つが、質量は電子のおよそ200倍、陽子のおよそ9分の1であり、正の電荷をもつミュオンは物質中では水素の原子核(陽子)の同位体のように振る舞う。
なお、MLFで造り出される正電荷ミュオンは、エネルギーが揃ったビームであり、炭素で1mm、銅で0.1mm程度の薄い実験試料に注入・静止させることができる。試料に注入した際、正電荷を持つミュオンは原子と原子の間で止まり、その周辺にある原子のみからの磁場を受けながら崩壊して陽電子を放出する。この陽電子を調べることで物質中の微小な磁場を解明する手法をμSRと呼ぶ。
※3 パルスミュオン
ごく短時間の間だけ変化する電流や電波をパルスと言い、J-PARCから得られる3GeV陽子ビームは、0.04秒間隔(25ヘルツ周期)で大量の陽子がまとまって加速される。陽子がグラファイト標的に当たり核破砕反応により生まれたパイ中間子が崩壊してミュオンが生成されるが、ミュオンも陽子と同期して0.04秒間隔で一度に大量に(パルス状に)生成される。
※4 量子ビーム
高エネルギー陽子を標的に衝突させると、2次粒子として中性子、パイ中間子、K中間子、ミュオン、ニュートリノなどが発生する。J-PARCの実験施設では、これら「量子」と総称される粒子をビームとして利用する。
※5 パイ中間子
1934年に理論物理学者の湯川秀樹によって存在を予言され、1947年に宇宙線の中から発見された粒子。核力を媒介し原子核中の陽子と中性子を結合させている粒子であり、電子よりも重く核子(陽子や中性子)より軽い粒子であることから中間子の名が付けられた。なかでももっとも軽量な中間子がパイ中間子であり、約5千万分の1秒でミュオンとニュートリノに崩壊する。なお、湯川秀樹は1949年に日本人として初めてのノーベル賞を受賞した。
※6 不安定素粒子
陽子、電子、光子、ニュートリノ以外の素粒子には寿命があり、ある時間がたつと別の素粒子に崩壊(または消滅)する。このような素粒子を不安定素粒子と呼ぶ。
※7 磁気モーメント
ミュオンが、自転する事で作り出される磁力。

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