平成22年1月28日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
国立大学法人東京大学
フランス・パリ南大学

超高時間分解能による高温水、超臨界水の放射線分解の観測に成功
−原子炉冷却水の管理技術向上に寄与−

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡ア俊雄、以下「原子力機構」という。)先端基礎研究センター放射線作用基礎過程研究グループの林銘章任期付研究員(副主任研究員)および勝村庸介グループリーダーらは、国立大学法人東京大学(総長 濱田純一)大学院工学系研究科原子力専攻の室屋裕佐助教、フランス・パリ南大学(学長 Guy Couarraze)物理化学研究所のMehran Mostafavi教授らとの国際共同研究により、短パルス幅の放射線を照射するパルスラジオリシス1)の手法を応用して、室温から超臨界状態にわたる高温高圧水の放射線分解挙動2)をピコ秒の時間分解能で観測することに、世界で初めて成功しました。この成果は、現行軽水炉や研究が進められている次世代超臨界水冷却炉の安全運転に不可欠な冷却水管理技術の開発にも大きく寄与すると期待されております。

水の放射線分解によって生成する化学種は、接触する周囲の材料腐食に深く関わることから、その管理は原子炉の長期間にわたる安全性とも深く関わる重要な課題です。特に高温の水、さらに374℃以上の高温で形成される超臨界水3)の放射線分解を把握し、冷却水の高度な管理へと役立てることは、次世代炉の開発においても必要不可欠です。そこで、原子力機構と東京大学は密接な連携のもと、放射線による冷却水の化学的変化の研究を進めてきました。しかし、数百度という高温においてはその分解反応が極めて速く進行するため、従来の分解能では不十分で、より高い時間分解能を持った反応計測装置の開発が期待されていました。今回、新しい計測手法・技術を開発し導入することにより、これまで計測できなかった短い時間範囲(60ピコ秒(6×10-11秒)から6ナノ秒(6×10-9秒)(従来の時間分解能の約200倍)も測定できるシステムを構築することに成功し、それを用いて放射線分解で生成する電子の高速挙動の観測に世界で初めて成功しました。

当研究成果は、現在の軽水炉や将来の超臨界水冷却原子炉の冷却水管理技術向上へ期待されます。なお、本研究成果は、米国化学会の学術誌「Journal of Physical Chemistry Letters」に1月7日に掲載済です。

以上

参考部門・拠点:先端基礎研究センター

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