用語集解説

1)材料試験炉(JMTR)
原子炉内において、燃料や材料に中性子を当てる試験を行うことのできる原子炉を材料試験炉と言い、原子力機構大洗研究開発センター内にJMTRがあります。
2)JMTRの改修
JMTRの改修は、平成19年度から始まり、平成23年度の再稼働に向けて順調に進められています。JMTRの改修内容は、原子炉機器等の一部更新と照射設備の整備で、原子炉機器等の一部更新については、原子炉制御系統、制御棒駆動装置、一次冷却系統、二次冷却系統、ボイラー・冷凍機、電源設備、排水設備、炉室給排気系統を更新しています。原子炉施設の一部更新と照射設備の整備の概要を右図に示します。

原子炉施設の一部更新と照射設備の整備の概要

3)中性子反射材
中性子が炉心から漏れ出すのを減らし、炉心の外にあっては炉容器などへの中性子照射による損傷を削減し、炉内にあっては中性子経済を向上させる目的で炉心の周りに配置する物質のことです。
4)ベリリウム
ベリリウムは金属元素の1つで、原子番号は4であり、原子量は約 9.012 です。常温、常圧で安定した結晶は六方最密充填構造(HCP)を持っています。比重は 1.85、融点は 1300 ℃ほどで、沸点は 2970 ℃です。銀白色の金属で、空気中では表面に酸化被膜が生成され安定に存在しています。常温では脆いですが、高温になると展性、延性が増します。アルファ線照射により中性子を放出する中性子線源であり、原子炉での中性子反射減速材として利用されています。
5)中性子散乱断面積
原子核と中性子の衝突のしやすさを表すものです。中性子散乱断面積が大きいと、中性子は原子核に衝突してエネルギー(速度)を失いやすくなるため、エネルギーの低い中性子(熱中性子)になりやすくなります。
6)核融合炉
核融合は核反応の一種で、水素、重水素、トリチウムなどの軽い原子核が核反応の結果、反応前の原子核より重い原子核ができる現象です。反応前と後では質量の総和は反応前の方が大きく、その差がエネルギーとして放出されます。この反応を利用してエネルギーを取り出そうとするのが、核融合炉です。
7)99Mo製造
98Mo(存在比約24%)を原料として、原子炉内で中性子による照射を行い、99Moを製造します。99Moは、がんや心臓などの診断に使う放射性検査薬である99mTcの原料として利用されます。日本におけるラジオアイソトープ流通総量の約85%を占めています。
8)シリコン半導体への31P添加について
ハイブリットカーや電車のサイリスタや大電力用トランジスタ等で使用するシリコン半導体は、シリコンウエハー内の不純物の分布が均一であることが要求されます。このような不純物分布が均一な半導体を作るため、原子炉での照射により不純物(31P)を注入します。
9)dpa(displacement per atom、ターゲット原子1個当たりのはじき出し数)
原子炉や核融合炉等で使用される材料は、中性子の照射を受けて材料特性が劣化します。この劣化の程度を示す指標の一つにdpaがあります。原子のはじき出しは、中性子が材料の格子原子に衝突したときに、格子原子が格子からはじき出されることによって起こります。原子炉では、熱中性子よりも、エネルギーの高い高速中性子が格子原子に衝突した方が、原子をはじき出しやすくなります。
10)He生成量[appm, atomic ppm]
中性子が材料中の原子との核反応によって生じます。一般に、(n,α)反応とよばれています。これは、中性子が原子に吸収された後、α線を放出するという反応です。α線は、ヘリウムの原子核のことです。
11)He/dpa比
He/dpa比は、核融合炉や原子炉で照射される際の中性子照射条件の指標として用いられます。ステンレス鋼の場合、中性子照射すると、ステンレス鋼中に含まれる数10%含まれるニッケルと58Ni(n,γ)59Ni(n,α)56Feという反応により、ヘリウムが生成します。この反応は、原子炉では、熱中性子との反応が支配的となります。
ステンレス鋼などの鉄鋼材料のHe/dpa比を制御した照射試験では、高速中性子束を加減させるよりも熱中性子を加減させる方が、その加減幅が大きいので、主に熱中性子を加減させることにより、He/dpa比を制御します。
12)中性子増倍材料
中性子増倍材料は、中性子を増やすための材料であり、トリチウムを効率よく作るために必要な材料です。中性子増倍材としては、鉛やベリリウムなどが候補材となっていますが、中性子増倍反応が大きいこと、原子数密度が高いこと、中性子増倍反応のしきいエネルギーが低いこと、中性子吸収断面積及び捕獲断面積が小さいこと、融点が比較的高いことから、核融合炉の固体増殖ブランケットではベリリウムが第一候補材になっています。
13)回転電極法
ベリリウム製の回転電極をアーク放電で溶かすと、溶けたベリリウムは遠心力で飛ばされている間に固まることにより、微小球を製造する方法です。現状の装置では年間120kgぐらい作ることができます。
14)過剰反応度
過剰反応度は、原子炉から制御棒を全て引き抜いた時の反応度のことで、原子炉を一定期間運転するためには、適当な過剰反応度が必要となります。

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