用語説明

1)レーザー・コンプトン散乱ガンマ線:
加速器で加速した数十MeVから数GeVのエネルギーを有する電子と、レーザー光をコンプトン散乱させることで発生させるガンマ線。エネルギーの高い領域では、レーザー光を光子(粒子)と見なすことができる。光子と電子の散乱によって、光子は高いエネルギーを電子からもらい、数十MeVから数GeVのエネルギーを持つ光子(ガンマ線)に変換される。入射したレーザー光は指向性が高くエネルギーが一定であるため、生成されたガンマ線も高い指向性と比較的狭いエネルギー幅を有する。
2)原子核共鳴蛍光散乱(Nuclear Resonance Fluorescence: NRF):
原子核には固有の励起状態が存在している。この励起状態のエネルギーに等しいエネルギーのガンマ線等が照射された場合、原子核はガンマ線を吸収し、続けて等しいエネルギーのガンマ線を放出する。この現象を原子核共鳴蛍光散乱とよぶ。
3)メラミン:
化学物質の一種。化学式はC3H6N6で水素、炭素、窒素から構成される。2007〜2008年には中国で食品へのメラミン混入事件が発生している。メラミン自体も毒性を有するが、窒素を含有するため、爆発物の模擬物質として広く使われている。
4)MeV:
メガエレクトロンボルト。エネルギーの単位。1Vの電圧が印加された状態で、1個の電子が加速されることで得られるエネルギーが1eV。1 GeVはその1,000,000,000倍。1 MeVはその1,000,000倍。1 keVはその1,000倍。
5)同位体:
個々の元素は、質量の異なる同位体から構成される。例えば、安定に存在する炭素は炭素-12、炭素-13から構成される。同位体の違いはその原子核に含まれる中性子の数の違いである。同一の元素であれば化学的な性質は同じため、一般に同位体を区別することは難しい。放射線を出して異なる種類の元素または同位体へ変換するものを放射性同位体という。
6)TERAS:
独立行政法人 産業技術総合研究所(つくば市)の電子蓄積リングであり、放射光施設として利用されている。円形の軌道に高エネルギー電子を周回させる装置である。その一部にレーザー・コンプトン散乱ガンマ線発生のための機器が設置されている。外部研究者が利用可能なレーザー・コンプトン散乱ガンマ線ビームラインは世界で3カ所のみであり、TERASのほかには、兵庫県立大学のNewSUBARU、米国デューク大学のHIGSがある。

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