平成21年3月26日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長：岡﨑俊雄、以下｢原子力機構｣)の核融合研究開発部門核融合エネルギー工学研究開発ユニット、ブランケット工学研究グループは、ITER（国際熱核融合実験炉）計画1)の実現に向けて開発を進めてきた核融合炉内機器の一つであるダイバータ2)の実機製作のための性能評価試験用ダイバータ試験体を、カワサキプラントシステムズ(株)、東洋炭素(株)、(株)アライドマテリアル、大和合金(株)の協力を得て製作し、高熱負荷試験に世界で初めて成功しました。
ITERのダイバータは、従来の工学機器では未経験の最大20MW/m2の高熱負荷3)に耐える構造が不可欠であり、炉心プラズマの最も高い熱負荷に耐え得る強固な設計が求められます。
ITER参加各極は、ダイバータ調達の納入基準となる20MW/m2の熱負荷で1000回以上の耐久性を達成すべく、長年研究開発を進めてきました。
この条件に対し原子力機構は、高熱負荷に耐え、純銅を超える高い熱伝導性をもった炭素繊維複合材4)に着目し、炭素繊維複合材製の表面保護タイルを銅合金製の冷却管に「ロウ付け5)」する構造の開発を行ってきました。
しかし、この表面保護タイルは、冷却管の銅合金よりも熱膨張係数が小さいため、冷却管との直接接合が困難でした。特に、多孔質で脆い性質の炭素繊維複合材と銅合金製冷却管の組合せ寸法精度の管理、さらに中性子環境下で使用可能な特殊なロウ材を用いた際の接合不良の克服が大きな課題でした。
そこで原子力機構は、長年のITER工学設計活動6)で得た知見に基づき、表面保護タイルと冷却管の間に柔軟な純銅製緩衝材を挟みロウ付けすると共に、炭素繊維複合材の接合面に予めチタンを塗布して金属化を図り、±5μmの組合せ寸法精度を達成し、接合不良を克服しました。
この技術で製作した性能評価試験用ダイバータ試験体の高熱負荷試験をITER機構7) が指定するロシアのエフレモフ研究所で行った結果、上記判定条件を達成したため、原子力機構はITER機構から、ダイバータ調達極（日・欧・露）で初となる実機ダイバータ製作に必要な技術能力を認定されました。
この成果をもとに、原子力機構は平成21年度よりダイバータ実規模プロトタイプの製作を、平成23年度を目途に実機用ダイバータの量産及びITER機構への納入を開始する見通しです。
なお、本成果は平成21年5月31日から米国のサンディエゴで開催される第23回核融合工学シンポジウムで発表する予定です。
以上