平成20年8月28日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

核融合炉用発電ブランケット第一壁の実規模モデルの製作及び性能試験に世界で初めて成功
−ITER試験用ブランケットの開発競争で世界をリード−

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長:岡ア俊雄 以下「原子力機構」)の核融合研究開発部門核融合エネルギー工学研究開発ユニットブランケット工学研究グループは、国際熱核融合実験炉ITER*1計画の実現に向け、核融合炉用発電ブランケット(以下「ブランケット*2」)(資料1 [形式:PDF])の開発を進めてきましたが、この度、JFEテクノリサーチ(株)及び金属技研(株)の協力を得て、将来ITERの炉心に取り付けて性能試験を行う(資料2 [形式:PDF])試験用ブランケット第一壁(以下「第一壁*3」)の実規模モデルの製作(資料3 [形式:PDF])と性能実証試験(資料4 [形式:PDF])に世界で初めて成功しました。

核融合炉発電の最重要機器の一つであるブランケットは、炉心プラズマで発生する中性子*4を用いて熱の取り出しや燃料*5となるトリチウム*6の増殖を行う機器であり、ITER建設のための機器とは異なり、我が国を含むITER参加各極*7が技術開発競争を展開しています。

核融合発電を行うためのブランケットのプラズマに直面する部分は、第一壁と呼ばれ、プラズマが発する高い熱や中性子に耐える構造とする必要があります。そのため、一般のステンレス鋼よりも耐熱性の高い低放射化フェライト鋼(資料5 [形式:PDF])の薄板と冷却管から構成され、その表面をプラズマ粒子から保護するため、ベリリウムの保護材を接合する構造(資料6 [形式:PDF])の採用が想定されています。

しかし、第一壁は、低放射化フェライト鋼製の多数の構造体から成る複雑で大きな構造のため、従来の溶融型の接合手法では、残留ひずみによる溶接変形が著しく、十分な製作精度が得られないことから、新たな製作手法の確立が課題でした。

原子力機構は、長年のITER工学設計活動*8で得た知見に基づき、拡散接合*9の一種である熱間等方圧加圧接合(HIP)法(資料7 [形式:PDF])を、世界で初めて低放射化フェライト鋼製の大型構造物の接合に適用し、熱処理工程の改良に加えて、加工精度の向上とHIP工程中の変形防止方法の工夫をすることにより、良好な接合を得るとともに構造物や流路の変形を抑制することができ(資料8 [形式:PDF])、さらに、実機熱負荷条件での熱耐久性能試験に成功しました。

今回の成果は、ITER試験用ブランケットの国際的な技術開発競争において、我が国の技術的優位性と主導的立場を一層強固にするものです(資料9 [形式:PDF])

なお、本成果は、平成20年9月15日からドイツのロストックで開催される第25回核融合技術に関するシンポジウム及び平成20年10月13日からスイスのジュネーブで開催される第22回国際原子力機関(IAEA)核融合エネルギー会議で発表する予定です。

以上

参考部門・拠点:核融合研究開発部門

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