平成20年7月7日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
株式会社 熊谷組

放射性廃棄物を大幅に低減できるコンクリート壁の構造体を開発

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡ア俊雄、以下「原子力機構」という)と株式会社熊谷組(取締役社長 大田弘)は、低コストで中性子を効率よく遮へいするとともに、放射性廃棄物の量を大幅に低減できるコンクリート壁の構造体を共同で開発しました。

原子力発電所や粒子線加速器施設など中性子の発生する施設では、施設の構造体のコンクリートに中性子が当たるとコンクリート中に放射性物質が生成され、ガンマ線などの放射線を放出(放射化)するようになるので、作業員の被ばく線量管理のために施設メンテナンス前に長い冷却時間を置く必要が生じます。また、長期間にわたり中性子が当たり続け、コンクリート内部に放射性物質が蓄積されると、施設の解体時にコンクリートを放射性廃棄物として処理しなければならず、一般産業廃棄物として扱うのに比べ、多額な費用が必要になります。

従来、中性子発生施設において、遮へい効果や放射化特性を向上させるためのコンクリート技術として、低放射化コンクリートやボロンを含有した低放射化コンクリートなどが研究・開発されてきましたが、これらの低放射化コンクリート単体でコンクリート壁に用いると、経済性を含めた総合的な観点からは、一長一短がありました(補足説明「表2」を参照)。

今回、中性子の遮へい性能及び経済性等から総合的に判断し、中性子線源側から順に、低放射化コンクリート層、ボロンを含有した低放射化コンクリート層及び普通コンクリート層の3層構造を持つコンクリート壁の構造体を開発しました。原子力機構における検証試験の結果、高価なボロン含有低放射化コンクリート層のみの単一構造体とした場合と比較して、性能は同等で製作費は2分の1から3分の1に、また、普通コンクリートのみの単一構造体とした場合と比較して、放射性物質の生成量を約3分の1に低減できることを確認しました。今回開発したコンクリート壁の構造体では、ボロンを含有した低放射化コンクリート板を型枠として用いて製作することにより生産性が向上するとともに、施設の解体時には放射能の高い領域の分離・廃棄を容易に実施することが可能となり、解体コストを大幅に削減できます。

今後、開発したコンクリートを原子力発電所や粒子線加速器施設、粒子線がん治療施設、PET診断施設、核融合炉施設等の中性子発生施設の建設に用いることにより、建設コストの削減、施設のメンテナンス作業開始までの冷却時間の短縮や施設解体時の放射性廃棄物発生量の低減などといった効果が見込まれます。

なお、本開発内容に関しては、特許として申請済です。

参考部門・拠点:核融合研究開発部門

以上


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