被控訴人「準備書面」の概要


本書面は、控訴人らの準備書面1〜4における主張に対する被控訴人の反論を述べたものである。


1.理事長指示がなされた打合せ時期を、第1回記者会見終了後第2回記者会見前の打合せ時であると断定することはできない
 (1) 控訴人らは、理事長の指示により12月25日と回答することが決まったのは第2回記者会見前の打合せのときであると主張する。
 (2) しかし、理事長の指示が第2回記者会見前の打合せでなされたとする証人2名の証言に信用性があり、第3回記者会見前の打合せでなされたとする証人3名の証言には信用性がないとすべき根拠はない。これらの証人は、相当の年数が経過するなかで、自己の記憶のとおりに忠実に証言をしたと考えるのが相当である。


2.理事長は、第2回記者会見で自らした指示に反する発言をしていない
 (1) 控訴人らは、理事長が、第2回記者会見前の打合せでは正直に対応するよう指示し、2時ビデオが動燃本社に存在することが判明した時期について平成7年12月25日と答えるよう指示したにもかかわらず、理事長は、自らの第2回記者会見では、2時ビデオの本社存在の判明時期について、1月11日ころであると記者が誤解するように発言し、記者はそのように誤解したと主張する。
 (2) しかし、原判決が、理事長が出席した第2回記者会見では「2時ビデオが動燃本社に存在することが判明した時期についての質問はされなかった。」、「1回目、2回目の記者会見では、動燃本社の幹部がいつ、動燃本社に2時ビデオが保管されていることを認識したのかという点が焦点となっていたとは認められない」と判示しているとおり、第2回記者会見においては、記者は、理事長が2時ビデオの本社存在を知った日について質問していないし、理事長もその点につき言及しておらず、ましてそれが1月11日ころであるなどとも発言していない。


3.総務部次長は第2回記者会見での理事長の発言内容を知らないし、また動燃関係者が総務部次長に対し「1月10日」と発言するよう指示した事実もない
 (1) 控訴人らは、総務部次長が第3回記者会見で「1月10日」と発言したのは、理事長の第2回記者会見での発言を知って、これと矛盾が生じないようにしたものであるとか、動燃関係者が、第3回記者会見前に、総務部次長に対して、1月10日と回答するよう指示したと主張する。
 (2) しかし、第2回記者会見終了後の打合せでは、概要のみが報告されたのであって、記者からの質問に理事長がどのように答えたかといったことは報告されていないし、第2回記者会見での理事長の発言内容を手書きでメモした資料も打合せでは配られていないのであり、理事長の個別具体的な発言内容が総務部次長に伝えられたという事実はない。
 また、原判決が、「2時ビデオを保管していた事実が判明した時期について、動燃が(総務部次長)に対して平成8年1月10日と回答するよう指示したことを示す客観的な証拠は存在しない」、遺書の内容に照らしても「動燃が(総務部次長)に対して、3回目の記者会見において虚偽の事実の発表を強いたとは認められない」と判示するとおり、動燃関係者が、総務部次長に対し、かかる指示をしたという事実はない。


4.総務部次長の自殺を予見することはできなかった
 (1) 控訴人らは、総務部次長の自殺の原因は、強いられた虚偽発言が当然露見し、露見すれば、理事長の退任・動燃の崩壊に至ることは必然であり、総務部次長は1月10日と発表するに至った真相を隠すしか術がなく、このため自殺したのであり、動燃関係者は、当然これらの事情を知り、自殺を予見していたと主張する。
 (2) しかし、総務部次長が、追い詰められた、自殺するかもしれない状況にあったことを裏付ける証拠はない。
原判決が、「本件各証拠に照らしても、1回目、2回目の記者会見が行われた時点において、(総務部次長)が3回目の記者会見後に自殺することを予見させる事情は認められないから、その時点で、動燃が(総務部次長)の自殺について予見し又は予見し得たとすることはできない」、総務部次長が「3回目の記者会見終了後、その記者会見での発言について重く責任を感じ自殺をほのめかすような言動をしていたなどの事情はうかがわれない」等とした上で、「動燃が、3回目の記者会見中あるいはその終了後の時点で、(総務部次長)の自殺を予見し又は予見し得たとまでは認められない」と正当に判示しているとおり、総務部次長の態度、言動は普段と何ら変わらないものであったのであり、総務部次長が自殺することを予見し得る事情は全くなかったのである。

以 上

もどる