用語解説

 
1)イーターでの遠隔実験
 イーターは、7極(日本、欧州、米国、ロシア、中国、韓国、インド)の協力で、欧州のカダラッシュ(フランス)に建設される核融合実験炉である。日欧の幅広いアプローチにおいて、青森県六ケ所村に国際核融合エネルギー研究センター内にイーター遠隔実験センターを設置し、日本からイーターの遠隔実験に参加することが計画されている。イーター遠隔実験センターは、イーター本体と高速ネットワークで結ばれ、日本においてイーターの運転条件の設定、データ収集、解析等が行えるようにする施設である。イーターサイトであるフランスのカダラッシュとの時差を利用して、イーターでの実験を効率的に行うことが可能である。


2)サテライトトカマク計画
 日欧共同で進めている核融合エネルギーの研究分野におけるより広範な取組を通じた活動(幅広いアプローチ活動)において進めているサテライトトカマク計画は、高い機動性によりイーター支援研究を行うことでイーターにおける試験研究を効果的・効率的に行うとともに、原型炉に向けたイーターの補完的研究を国際的に行うことにより、核融合エネルギーの早期実現を図ることを目的としている。具体的には、茨城県那珂市のJT-60装置を、超伝導コイルを用いた装置へ改造し、性能を高める計画が進行中であり、改造後の同装置では、欧州からの遠隔実験も行われる。


3)制御システム
 JT-60の制御システムは次の3つの機能を有し、実験条件に従ってプラズマを生成するとともに、装置を保護し、安全な運転を担保している。
 (a) 実験条件の適合性検査
 実験条件の主要パラメータである、プラズマ電流値、トロイダル磁場強度等の設定値が、その時点での装置状態の許容かつ実現可能範囲に入っていることを検査確認する。
 (b) プラズマの実時間制御
 プラズマのパラメータ(プラズマ電流値、トロイダル磁場強度、プラズマ形状、プラズマ密度、核融合出力(中性子発生率)等)が実験条件に従うように、加熱装置、燃料供給装置、コイル電源装置等を用いて実時間フィードバック制御を行い、実験目的に合致したプラズマを生成する。
 (c) プラズマ生成中の装置の保護(実時間インターロック)
 プラズマ生成中の核融合出力(中性子発生率)、各コイル応力・磁場強度、加熱時のプラズマ形状等が装置の許容範囲に入っているかどうかを監視し、万一その範囲を逸脱しそうになった時はすみやかにプラズマ放電を停止させる。


4)グリッド・コンピューティング
 ネットワーク上に分散した複数のコンピュータ資源を共有することで、仮想的に高速コンピュータを作り、セキュリティーを保ちつつ利用者が容易に必要な処理能力や記憶データを利用できるようにすること。


5)IT Based Laboratory(ITBL)基盤ソフトウェア
 国家施策e-Japanの下、「研究開発のIT化を実現するため、2005年度までに国内のすべての研究機関のスーパーコンピュータを大容量ネットワーク上で共用化が可能な環境を構築し、その普及を促進する」ことを目的として平成13年度より5ヵ年で推進した国家プロジェクトITBL計画においてシステム計算科学センターが開発した基盤ソフトウェア。ITBL計画は、独立行政法人物質・材料研究機構、独立行政法人防災科学技術研究所、独立行政法人宇宙航空研究開発機構、独立行政法人日本原子力研究開発機構、独立行政法人理化学研究所、独立行政法人科学技術振興機構の6機関により実施。インターネット上に散在する計算資源、知識、ノウハウなどをネットワーク上で共用化することにより、複雑で高度なシミュレーション、遠隔地との共同研究を容易に行えるグリッド・コンピューティング基盤技術を開発した。


6)Atomic Energy Grid InfraStructure (AEGIS)
 原子力機構の中期計画の下、ITBL計画で開発した技術を活用し、原子力分野に必要となる計算機環境の実現を目指したグリッド・コンピューティング基盤。


7)国内での遠隔実験
 原子力機構核融合研究開発部門とシステム計算科学センターが共同で開発した高度なセキュリティーの下で遠隔地からでも実験を実施できるシステムを用いて、平成18年6月6日に京都大学からJT-60の遠隔実験を実施した。
 (http://www.jaea.go.jp/02/press2006/p06080801/index.html参照)

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