用語説明


1.サイクロトロン
 強力な磁場の中でイオンを周回させながら加速する型の加速器。原子核研究のために開発されたが、近年ではがん治療にも用いられ、医療用の放射線同位元素製造には我が国だけでも約100台が稼動している。半導体開発やバイオ技術研究のための専用のサイクロトロンはTIARAが唯一。


2.マイクロビーム
 文字通りにビームスポットの直径が1ミクロン程度のビーム。イオンビームの他に、電子線、レーザー、紫外線、X線でも実現されている。


3.レンズ、マイクロビームレンズ、四重極電磁石
 光におけるレンズと働きは同じだが、イオンビームのレンズは磁石である。4個の極がビームを取巻くように配置された四重極電磁石が一般的で、ビームを輸送する真空チューブに沿って数十個並べられている。通常はセンチメートル程度の大きさのビームをミクロンに絞るレンズも四重極電磁石でマイクロビームレンズと呼ばれる。静電加速器のマイクロビーム形成装置では2連のものが主流だが、サイクロトロンのビームではエネルギーが高いために更に大きな集束力が必要で、TIARAでは4連が用いられている。


4.ビームエネルギー幅
 単一の周波数(または波長)の光を単色光と言い、スペクトルは線状である(幅が無い)。周波数(波長)に分布があってそれが広いほど、スペクトルは幅を増す。イオンビームではエネルギーは光の周波数(波長)に相当する。一般のサイクロトロンではビームエネルギーに対するビームエネルギー幅の比は0.2%程度で、TIARAのサイクロトロンではフラットトップ加速を用いた場合で約0.05%である。


5.色収差
 光(イオンビーム)をレンズで絞ったときに波長(ビームエネルギー)によって像点の大きさが異なる現象。白い星を双眼鏡で見ると色がにじんだようにみえるのはこのため。


6.フラットトップ加速
 通常のサイクロトロンでは正弦波の高周波加速電圧が用いられている。正弦波の電圧は時間とともに常に変化しているため、時間的な広がりをもったイオンビームは各イオンが僅かに異なる電圧で加速されて、エネルギーに違いができてしまう。そこで、TIARAでは通常の正弦波電圧に5倍の周波数の正弦波電圧を重ねて台形に似た電圧波形を作り出し、平らな部分で加速することによってビームエネルギー幅を抑制している。




7.シングルイベント効果
 大規模集積回路(LSI)に入射した1個のイオンがLSIのビット(「1」または「0」の状態)の反転や動作停止を起こす現象。人工衛星などに搭載されたLSIで従来から大きな問題になっていたが、高集積が進んで回路の線幅が数十ナノメートルになった現在は、地上に降り注ぐ宇宙由来の中性子でも起きるようになった。


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