平成19年7月27日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
国立大学法人東京大学
学校法人京都産業大学
国立大学法人大阪大学
 
超伝導を引き起こす「重い電子」の不思議な振る舞いを捉えた
−「遍歴・局在転移」の過程が明らかに−

 
 独立行政法人日本原子力研究開発機構【理事長 岡撫r雄】量子ビーム応用研究部門の藤森伸一副主任研究員らは、同先端基礎研究センターの芳賀芳範研究主幹、国立大学法人東京大学の藤森淳教授、学校法人京都産業大学の山上浩志教授、国立大学法人大阪大学の大貫惇睦教授らと共同で、希土類金属またはアクチノイド1)化合物などに存在し、その物質の超伝導2)などの特異な性質の原因となる「重い電子」3)が示す不思議な振舞い「遍歴・局在転移」の過程を、放射光を用いた実験で明らかにすることに成功しました。
 一般的に物質中の電子は、金属中の電子のように物質中を自由に動き回る「遍歴状態」と、絶縁体中の電子のように原子に束縛されて動けない「局在状態」の二種類に分類されます。
 しかしながら、「重い電子」はその両方の性質を持っており、極低温では遍歴状態、高温では局在状態を示すことが知られていましたが、その具体的な挙動は30年来明らかになっていませんでした。
 今回、当研究グループは大型放射光施設SPring-8からの放射光を用いた角度分解光電子分光法4)による測定を行い、重い電子系化合物UPd2Al3(ウラン・パラジウム・アルミニウムからなる化合物)の「重い電子」を直接測定することによって遍歴状態と局在状態の違いを詳細に観測することに成功しました。
 これは世界トップクラスのX線強度とエネルギー分解能を持つ測定装置を開発したことと、ウランなどの放射性物質の取り扱いが可能な原子力機構用ビームラインを用いたことで初めて実現したものです。重い電子系化合物は、従来の金属で観測されている超伝導とは異なる種類の超伝導を示す場合があります。
 今回の成果によって、重い電子の示す超伝導に対する理解が進み、さらには超伝導現象一般に対する理解が大きく進展するものと期待されます。
 本成果は、英国の科学誌Nature Physicsのオンライン速報版に2007年7月1日に掲載されました。


  ・超伝導を示す「重い電子」の局在・遍歴転移の直接観測に成功
  ・補足説明
  ・用語説明
以 上

参考部門・拠点:量子ビーム応用研究部門


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