用語説明
 
1)【小型で強いレーザー】
 本研究で使用したレーザーで、より正確には「極短パルス高強度レーザー」と呼ばれる。レーザー光の瞬間ピーク出力を高めるために、レーザー光のパルス幅を短くしたものである。典型的には、フェムト秒からピコ秒のパルス持続時間であるが、そのパルスのピーク出力値は、テラワット(テラは10の12乗=1兆を表わす)に達する。このピーク値が高いことを利用して、非熱加工や、超高速現象の観察、荷電粒子加速、イオン化など、幅広い分野で利用されている。
 レーザーの出力を上昇させていくと、レーザーを構成する光学素子に損傷を与えるしきい値により、その出力値は制限される。極短パルスレーザーは、主にチャープパルス増幅法によりこの制限を一部突破したものである。これは、一旦パルスを伸長した後に増幅を行い、増幅部での光学素子損傷を回避し、その後、パルス圧縮することで再び極短パルスを得るという方法である。これにより、高いピーク出力値を達成できることができる。


2) 【位相コントラスト法】
 光(X線)などで物体の観察を行なう際に、一般には、物質によって光が吸収されることで出来る濃淡により作られる吸収コントラスト像が用いられている。これは光の吸収が大きい部位などはコントラスト(濃淡)がはっきりとした明瞭な像が得られるが、光の吸収率の小さい部位では、濃淡がはっきりとしない。これを吸収率ではなく、屈折率による違いにより発生する光の位相差によって濃淡を作る方法が位相コントラスト法である。このためには、観察に利用する光(X線)の位相が揃っている必要がある。図5にこれらの方法の概念図を示す。この位相コントラスト法により、吸収コントラストでは見ることが困難な構造(例えば、小さな腫瘍など)も観察できるようになる。この手法は、X線の他に、光学顕微鏡(可視光)や、電子線、陽電子線などでも応用されている。


3)【CT装置】
 コンピュータ断層撮影(Computed Tomography)を行なう装置。X線などの断層写真を多数枚取得し、内部の2次元画像(3次元も)をコンピュータにより計算して得ることが出来る。医療では、診断用に実用化され、X線CTや、陽電子断層法(PET)、核磁気共鳴画像法(MRI)などがある。


4)【シンクロトロン放射光】
 高エネルギーの荷電粒子(特に、電子線)が磁場で曲げられるときに発する光。高エネルギーまで電子を加速する粒子加速器シンクロトロンでは、偏向電磁石部などで発生し、その光の波長はX線領域にまで達する。このX線は、輝度が高く、位相が揃い、波長幅が広いという特徴を持つ。大型放射光施設スプリング-8などでは、物質科学や生命科学、核物理など幅広い分野で利用されている。

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