平成19年4月27日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
 
1メガワット級マイクロ波発生装置の高効率発振機構を解明
−ITER用プラズマ加熱装置の性能向上に貢献−

 
 独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡撫r雄、以下「原子力機構」という)は、ジャイロトロンと呼ばれる大電力のマイクロ波を発生する装置の研究開発を進めている。このたび、発振(生成)させることは難しいが、一旦発振できれば高い発振効率が得られると理論的に予測されていた領域(難発振領域)での安定な定常発振を世界で初めて実証し、周波数170ギガヘルツ(電子レンジの70倍の周波数)で、出力1メガワット、効率*注55%以上の大出力発振に成功、連続マイクロ波源としての世界記録を達成した。

 ジャイロトロンは、数ギガヘルツからテラヘルツに至るまでの幅広い周波数領域において、位相の揃った電磁波を生成させる電子管であり、核融合炉では核融合反応を起こすためにプラズマを加熱する装置として使用される。原子力機構は、国際熱核融合実験炉(ITER)への適用を念頭に170ギガヘルツジャイロトロンの研究開発を進めており、昨年、ITERの定常燃焼実験に使用できる1,000秒間の定常発振(出力0.6メガワット、効率45%)を世界に先駆けて実証している。

 今回、この定常発振の技術を発展させ、エネルギー源となる回転電子ビームの回転周波数と回転比(らせん運動の回転速度と進行速度の比)を発振中に制御することで、発振が容易な従来の運転領域から高い効率が得られる運転領域(難発振領域)に安定に移行させることに世界で初めて成功した。その結果、これまでの世界記録を大きく上回る出力1メガワットで発振効率55%を達成した(補足資料1、2)。この難発振領域での目指す周波数(正規モード;170ギガヘルツ)の発振は、意図せずに発生してしまう別の周波数(近傍モード;167ギガヘルツ)により妨げられるものとこれまで考えられていた。しかし今回の研究により、近傍モードは、正規モードの成長を助け、最終的には自らは消えて正規モードの高効率発振を実現させる役割を果たすという物理機構が解明された(補足資料3)。この高効率発振メカニズムは、ジャイロトロンの安定化や性能の拡張をもたらし、ITERの加熱装置の性能向上に大きく貢献するものである。さらに、発振が安定化し、効率が向上したことにより、他分野への波及効果(補足資料4)も期待される。

 これらの結果は、4月29日発行の英国の学術誌ネイチャー・フィジックス誌(電子版)において発表される。

 注)発振効率:入力の直流電力から、高周波として出力される電力の割合。


 補足資料1: ジャイロトロンのしくみ(PDF、108kバイト)
 補足資料2: 170GHzジャイロトロン性能の進展(PDF、104kバイト)
 補足資料3: 初めて難発振領域で安定発振(世界初)/正規と近傍モードを組み合わせたシミュレーション結果(PDF、139kバイト)
 補足資料4: ジャイロトロンを用いた高周波数マイクロ波の可能性(PDF、103kバイト)
以 上

参考部門・拠点:那珂核融合研究所


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