補足説明
 
1. CTBTの現状(2007年2月22日現在)
CTBTが発効するためには、特定の44ヶ国(発効要件国(注))全ての批准が必要とされている(条約第14条)。しかし、現在、一部発効要件国の批准の見通しが立たず、条約は未発効。
(1)署名国177ヶ国、批准国138ヶ国
(2)発効要件国44ヶ国のうち、署名国41ヶ国、批准国34ヶ国
(注)条約の附属書2に掲げられているジュネーヴ軍縮会議の構成国であって、IAEA「世界の動力用原子炉」の表に掲げられている国。
 
2. CTBTの検証制度
CTBTの遵守を検証するため、(1)国際監視制度(IMS)、(2)協議及び説明、(3)現地査察及び(4)信頼醸成についての措置からなる検証制度を定めている。
(1) 国際監視制度(IMS)とは、地震波監視170カ所、放射性核種監視80カ所、水中音響監視11カ所、微気圧振動監視60カ所、及び公認実験施設16カ所からなる世界337カ所の観測所網により、CTBTにより禁止される核兵器の実験的爆発又は他の核爆発が実施されたか否かを監視する制度である。IMSから得られたデータは、ウィーンの国際データセンター(IDC)で収集され、各締約国に平等かつ適時に配信される。条約遵守に係わる判断は、IDCを経由して受け取るIMSデータ及び各国の独自情報により、各締約国が行う。なお、日本国内には放射性核種監視観測所2カ所、公認実験施設1カ所、地震監視観測所6カ所、微気圧振動監視観測所1カ所の計10カ所の観測所を設置することが条約に定められている。
(2) 「協議及び説明」とは、IMSデータの分析や、その他各国独自の検証技術によって得られた情報によって条約の基本的義務違反(核兵器の実験的爆発又は他の核爆発)の可能性について懸念を引き起こす問題が生じたとき、締約国は、いつでも他の締約国に対して、この問題を解決するための協議と説明を求めることができる仕組み。
(3) 「現地査察」とは、核兵器の実験的爆発又は他の核爆発が実施されたか否かを明らかにするとともに、違反した可能性のある者の特定に資する事実を可能な限り収集することを唯一の目的として実施される査察。査察員は、前もって各締約国から提出される候補者リスト及びCTBT機関職員から専門性に応じて選ばれ、最大40名のチームで構成される。査察範囲は1000km2以内、期間は最大130日間とされている。締約国は、IMSデータの分析や、その他各国独自の検証技術によって得られた情報に基づき、全締約国の管轄下又はいずれの国の管轄下にもない場所について、現地査察をCTBT機関執行理事会に要請する権利を有する。
(4) 「信頼醸成措置」とは、(a) 化学的爆発に関連するデータを核実験と誤って解釈することから生ずる条約遵守についての懸念を適時に解決するため、300t/TNT相当以上の単一化学爆発を実施する場合、締約国はCTBT機関技術事務局に対して通報したり、(b) 国際検証制度の誤差・誤認をできるだけ少なくするため、観測所の特性(校正データ等)を把握することについて、各締約国が援助する仕組みや取決め。

3. 放射性核種監視ネットワークの設計基準
 放射性核種監視ネットワークの設計では、「1kt相当の核爆発※をほぼ14日以内に90%以上の確率で探知する」という基準に基づき、核実験後10日前後で最も放射能の強い核種である140Ba(2×1015Bq)及び133Xe(1×1015Bq)を放出源核種として、大気中、水中、地下での核爆発におけるこれら放射性核種の全地球規模での大気輸送計算(シミュレーション)を行い、観測所の数、場所、更には観測方法とその感度等の最低技術要件を詳細に定めている。
 ※ 広島での原爆は、約15〜20ktと推定されている。
 

もどる