平成19年2月16日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
 
原子炉を用いたがん治療研究が100例を突破
−原子力技術を用いて先端的がん治療法の確立に貢献−

 
 独立行政法人日本原子力研究開発機構 (理事長 岡 俊雄、以下「原子力機構」) は、原子炉を用いて、筑波大学をはじめとした医療機関が行う先端的がん治療法であるホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)の臨床研究に貢献していますが、平成19年1月に臨床件数が100例を突破しました。
 BNCTは、中性子を用いる放射線治療の一種であり、がん細胞を選択的に破壊できるという特徴から、有効な治療法がない悪性脳腫瘍などの治療法として注目されています。

 原子力機構でのBNCTは、研究炉JRR-2とJRR-3を用いて悪性脳腫瘍の患者に対する臨床研究が実施されて来ました。ここでは、速度の遅い中性子が用いられ、その対象は主に脳の表面にあるがんに限られていました。
 その後、JRR-4の改造に合わせて、より速度の速い中性子を発生できる中性子ビーム設備を開発し、脳表面のみならず脳内深部にあるがんに対する治療を可能にしました。
 また、中性子ビームが患者に付与する線量を高い精度で評価できる線量評価ソフトウェア(JCDS)を併せて開発し、これまで計測できなかった脳内深部の患部及び周辺組織への線量を把握することで、患者への最適な照射条件の事前決定が可能となりました。

 この中性子ビーム設備と線量評価ソフトウェアなどの開発により、深部のがんも対象にした臨床研究が実施されています。最近はこの技術を悪性脳腫瘍だけでなく頭頸部、肺、皮膚のがんにも適用できるように高度化し、これらのがんに対する臨床研究も可能にしました。

 このように、原子力機構が医療機関と協力しながら、幅広いがんの症例に研究炉を用いたBNCTが適用できるよう技術開発を行ってきた結果、臨床件数が急増し、平成19年1月までにJRR-2からJRR-4までの症例数を合わせて100例を超えました。
 原子力機構は、原子力技術の医療応用を促進するため、今後も筑波大学などの医療研究グループや地域病院と連携して先端的がん治療法の確立に貢献していきます。


 資料1:BNCT臨床研究の現状(PDF、177kバイト)
 資料2:JRR−4の中性子ビーム設備(PDF、517kバイト)
 資料3:ホウ素中性子捕捉療法 (BNCT) の原理と特徴(PDF、179kバイト)
 資料4:線量評価ソフトウェア(PDF、286kバイト)
 資料5:BNCT研究における研究分担(PDF、153kバイト)
以 上

参考部門・拠点:東海研究開発センター 原子力科学研究所


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