用語解説
 
1)宇宙線
 宇宙空間を飛び交い地球に降り注いでくる、陽子を主とする高エネルギー放射線を宇宙線と呼びます。地磁気に捕捉された比較的エネルギーの低い放射線から、超新星爆発などで加速された極めてエネルギーの高い放射線まで、様々な放射線が含まれます。

2)中性子スペクトル
 中性子は、そのエネルギーによって引き起こす核反応の種類が違うため、その人体や半導体への影響を評価するためには、強度だけでなくエネルギー分布、すなわちスペクトルを評価することが重要となります。

3)航空機乗務員の被ばく
 航空機内は、地表面と比べて宇宙線の強度が強く被ばく線量率が高い状態にあり、航空機乗務員の年間被ばく線量は、原子炉等の作業員と同等もしくはそれ以上となる可能性があります。この問題は、国際放射線防護委員会(ICRP)の1990年勧告で航空機乗務員の被ばくが職業被ばくに認定されて以降、世界中で盛んに議論されています。日本でも、今年、文部科学省の放射線審議会が、航空機乗務員の被ばく線量が年間5mSv以下となるよう各航空会社に自主管理を要求しました。これを受けて、その被ばく線量に対する評価手法開発の必要性が急速に高まっています。

4)半導体ソフトエラー
 半導体メモリの有感部分に、放射線によりある一定値以上の電離が与えられると、メモリ反転などの誤動作を引き起こします。従来は、極めて放射線レベルの高い宇宙環境や加速器施設などにおいてのみ問題となっていましたが、近年の急速な半導体素子の小型化に伴い、宇宙線由来の中性子が航空機内や地表面で引き起こすソフトエラーが大きな問題となっています。例えば、256Mバイトのメモリを搭載したノートパソコンを高度約10000mで飛行中の航空機内で使用した場合、約5時間に1回の頻度でソフトエラーが発生していると推定されており、地表面においても、この1/100程度の頻度で発生していると考えられています。したがって、信頼性の高いコンピュータシステムを構築するためには、そのソフトエラー発生頻度を正確に予測し、それに応じた様々な対策(エラー発生頻度の低い半導体素子の採用やエラー訂正回路の組込など)を講じる必要があります。
 参考URL http://www.ednjapan.com/content/issue/2005/02/feature/feature02.html

5)放射線輸送計算コード
 放射線が、物質中で核反応や電離などの相互作用をしながら移動する現象をコンピュータ内でシミュレーションするプログラム

6)評価済み核データライブラリ
 放射線輸送計算コードを用いて放射線の輸送計算を行うために必要となる様々な核反応断面積などのデータを、実験値や計算モデルを用いて評価し取りまとめたデータ

7)Cut-off rigidity
 地磁気の強さを表す指標。ある宇宙線が地球に向かって垂直に入射したときに大気上空に到達できる荷電粒子の曲がりにくさの下限値を表す量。高エネルギーかつ電荷の小さい放射線ほど曲がりにくい性質があります。
以 上

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