平成18年5月9日
独立行政法人
日本原子力研究開発機構
 
JT-60、高閉じ込め・高圧力状態のプラズマの長時間維持に成功
− ITERの長時間燃焼の実現性をフェライト鋼でより確実に −

 
 独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 殿塚猷一)は、核融合エネルギーを取り出すための研究を行う臨界プラズマ試験装置(JT-60)において、フェライト鋼を用いた磁場形状の改良により、燃料となるプラズマを国際熱核融合実験炉ITERで必要とされる高閉じ込め1)・高圧力2)の状態で世界最長の28秒間維持した3)。今回の成果は、ITERの達成技術目標である長時間燃焼の実現性の見通しをより確実にするものである。

 ITERにおいては、核融合炉の実現に向けて、燃焼プラズマ4)の制御技術を確立するために、エネルギー増倍率5)(核融合出力と外部加熱入力の比)が10以上で高い核融合出力を有するプラズマを長時間維持することが主要な目標となっている。核融合出力はプラズマ圧力(温度×密度)の二乗に比例するので、その目標達成には、
 @ プラズマ圧力を高め、核融合出力を増大する、
 A 閉じ込め性能を高く保ち、高いプラズマ圧力を維持するのに必要な外部加熱入力を低減する、
の2つを同時に満足する必要がある。プラズマ圧力の指標として「規格化プラズマ圧力」2)、閉じ込め性能の指標として「閉じ込め改善度」1)が用いられる。

 JT-60においては、主に、中性粒子ビーム入射6)によってプラズマ中に生成される高速イオンを利用してプラズマを加熱している。近年の研究により、高速イオンの損失が閉じ込め性能の劣化を引き起こす可能性が明らかとなったため、高速イオンの損失の低減を目的として、強磁性体であるフェライト鋼を用いたプラズマ閉じ込め磁場形状の改良7)を昨年実施した。
 改良後の実験において、高速イオンの損失の低減を確認するとともに、予想通り、閉じ込め性能の改善を得た。その結果、高い規格化プラズマ圧力を従来より高い閉じ込め性能で安定に維持し、ITERで必要とされる(規格化プラズマ圧力)×(閉じ込め改善度)の値8)の維持時間をJT-60において最大限可能な連続ビーム入射時間に近い28秒まで伸長した。この成果により、ITERにおける長時間燃焼の実現性の見通しをより確実なものにした。

 今回の成果は、6月19日からイタリアで開催されるヨーロッパ物理学会において発表する予定である。



 ・JT-60、高閉じ込め・高圧力状態のプラズマの長時間維持に成功
 ・補足説明(PDF、1000kB)
 ・用語解説(PDF、72kB)

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