別添資料


JMTR利用検討委員会報告書の概要


 検討委員会では、材料試験用原子炉に対する利用ニーズ、利用ニーズに応えるための照射施設及び照射後試験施設の性能、これら試験施設の利用性のあり方を検討した。

 この中で、我が国の原子力発電の主力は、今世紀半ば、あるいはより長期に軽水炉が担うことになるとの見通しが示され、その上で一般的なニーズとして、現行軽水炉の高経年化対応の研究開発、MOX燃料を含む軽水炉燃料の高性能化及び安全評価などの具体的な課題が提示された。また、医療及び工業用のラジオアイソトープ(RI)の生産や近い将来に急増することが見込まれているハイブリッド自動車等に利用される大口径のNTD(Neutron Transmutation Doping)シリコン半導体の照射需要も明らかにされた。加えて、材料試験炉を利用した大学等の基礎研究や教育は、材料科学の進歩に加えて、次の時代を担う人材を育成するために不可欠であるとの指摘がなされた。

 これらの利用ニーズに加えて国内に材料試験用原子炉を持ち、軽水炉の高経年化等の安全規制や各種の事故、故障に適確に対応する基盤を確保することは、軽水炉に対する国民の信頼を得る観点からも重要であるとの意見があった。特に、世界の原子力先進国は材料照射や燃料性能向上照射試験ができる試験炉を維持・確保しており、原子力先進国としての日本が更なる原子力技術の維持・発展を図る上で、また、今後アジア・環太平洋地域での原子力平和利用が一段と進展すると考えられる中、我が国が原子力安全確保をはじめ、原子力利用技術に関する主導的な役割を果たすためにも、材料試験用原子炉を有することが不可欠であるとされた。

 その上で、材料試験用原子炉と照射後試験施設群が隣接するJMTRの活用を基本とすることを前提として、予想される利用ニーズに対応するための施設の性能及び運用について検討した。この中で、JMTRは、運転開始から38年が経過し、基本的な構造材等の健全性は担保されているものの制御系などの原子炉計装システム等の高経年化が進んでおり、予防保全を主とした原子炉等の一部施設の更新が必要であることが明らかにされた。

 このため、今後の利用ニーズに速やかに対応するため、できるだけ早期にJMTRを更新し再稼動すること、具体的には、平成18年度半ばに原子炉を停止した後、原子炉の更新及び照射設備の整備に着手することが望ましいとされた。更新後の運営において、多くのユーザに利用してもらうため、照射費用などの利用料金が国際的な競争に対応できるようにすることや原子力機構が有する照射技術や照射後試験技術に関する専門的能力をユーザに最大限提供することなど利用サービス等の改善の必要性が指摘されるとともに、隣接する照射後試験施設群と連携した「国際照射試験センター(仮称)」構想の提案もなされた。

 なお、JMTRを廃止する時期については、本検討会で検討された軽水炉にかかる利用ニーズが一段落する2030年頃が一つの目安であるとの見通しが示された。

以 上
 

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