平成21年4月1日

平成21年度職員入社式 理事長訓示

本日、若さ溢れ、夢と希望に満ちた前途洋々たる皆さんを、独立行政法人日本原子力研究開発機構にお迎えすることができたことは、私達にとって大きな喜びであり、役職員一同、心から皆さんを歓迎するところであります。

日本原子力研究開発機構は、我が国で唯一にして最大の原子力分野における総合的研究開発機関として、原子力の基礎・基盤から実用化を目指した巨大プロジェクトに至るまで、極めて幅広い領域を対象とし、よりよい成果をあげるために役職員全員が日々努力を重ねているところであります。本日より、皆さんは、その一員として参加されることとなり、共に一致協力して、その責任を果たして頂きたいと思います。

皆さんをお迎えするに当たって、まず原子力を取り巻く情勢に触れておきたいと思います。

現在、地球温暖化防止とエネルギー安全保障のために原子力エネルギーの重要性が世界的に再認識され、多数の原子力発電所の建設計画が進むなど、世界では原子力ルネッサンスと呼ばれる時代が到来しています。これは、先進国に限ったことではなく、昨年7月の北海道洞爺湖サミットでは、原子力発電の重要性が強調され、主要8カ国(G8)首脳は、日本が提案した核不拡散と安全性に基づく原子力エネルギー基盤整備の国際協力宣言「3S(核不拡散safeguards、原子力安全safety、核セキュリティーsecurity)に立脚した原子力エネルギー基盤整備に関する国際イニシアチブ」を発表し、原子力開発に関心を持つ国に対する支援の方針を打ち出しました。

これにより、途上国においても、法整備や高度な技術が必要な運転・管理の人材など原子力発電所導入に向けた環境整備が進むことは確実な情勢です。その際、世界トップレベルの知識と経験を抱えるわが国への期待は高く、今、日本の原子力は世界の原子力開発への貢献という歴史的転換点にあるといえます。

また、昨年の世界規模的な金融危機に端を発した100年に一度といわれる経済危機の影響を受けて、我が国においても様々な産業分野において、大変厳しい状況に直面しています。その中で、原子力の研究開発は、新たな科学技術・産業の創成に大きく貢献する科学技術のひとつとして注目されています。

このような内外の状況下において、原子力機構の果たすべき使命は更に高まり、先見性のある質の高い研究成果が求められております。

原子力機構は発足して3年半が経過し、今年度、平成21年度は第1期中期計画の最終年度にあたります。これまでの研究開発を取りまとめ、そして、原子力機構が取り組んでいる様々な事業において、これまでの成果を次期中期計画に活かしていくための節目の年であることを意味しています。

いくつか代表的なプロジェクトの現況を紹介しますと、まず、平成13年から高エネルギー加速器研究機構と共同で、ここ東海村において建設を進めてきたJ-PARCが完成し、昨年12月から供用開始を迎えることができました。更に間もなく「ニュートリノ実験施設」が完成し、国内外から多数の研究者がJ-PARCを利用し、基礎研究から産業応用までの幅広い研究分野の利用が可能となり、人類の発展に貢献する世界的研究拠点となることを期待しています。

核融合の研究開発においては、ITER計画、幅広いアプローチ(BA)活動の国内実施機関として、サイト整備や施設の建設など本格的な活動を開始しました。原子力機構は、与えられた役割を十分果たし、人類の将来のエネルギー源としての核融合の実用化を目指していきます。

放射性廃棄物については、原子力開発に当って避けて通ることの出来ない重要な課題ですが、昨年、わが国の研究所等から発生する低レベル放射性廃棄物の処分事業が原子力機構の新たな役割に加わりました。更に、原子力開発全体にとって大きな課題である高レベル放射性廃棄物の地層処分の実現に向けた中核研究機関として、北海道幌延と岐阜県瑞浪の2つの深地層研究計画を進めています。

一方、運転再開に向け準備を進めていた高速増殖原型炉「もんじゅ」は、昨年のナトリウム漏えい検出器の不具合や排気系ダクトの腐食により工程変更が生じました。現在機構をあげて改善活動に全力で取り組み、安全確保を第一に透明性を図りながら、早期運転再開を目指し、役職員が一丸となって懸命な努力を重ねています。

原子力の研究開発分野は、常に将来を見据えて、その時々の状況を的確に捉え、社会への貢献を意識することが重要となります。私たちは、その広い視野を忘れずに、事業を推進していくことが大切です。

皆さん方も将来のエネルギー問題や地球環境問題の在り方について、常に意識して業務に取り組んでいただきたいと思います。

原子力機構の一員となるみなさんに、ここで、2つのお願いをいたします。

第一は、社会人として、プロであるとの自覚をもって、常に未知の世界にチャレンジする精神を持ち続けて、取り組んで欲しいということです。それぞれの研究開発の分野では、その可能性は無限に広がっています。皆さんには、原子力のプロとして、安全確保を徹底して、新たなる分野に挑戦していただきたいと思います。

原子力の研究開発は、必ずしも順風満帆で歩んできたとは決して言えません。皆さん方の諸先輩は、様々な困難に立ち向かい、一つ一つその問題を解決し、今日の原子力機構を築いてきました。国民の信頼を第一に、組織の一員として、公的な研究開発機関で働くという使命感を持ち、自らの基盤をしっかりと有し、その上で組織力をもって困難に立ち向かっていく強さを持ち続けてください。

そのような皆さんひとりひとりの姿勢が、原子力開発の未来を切り拓いていくものと考えます。

私たち一人ひとりが社会や国民に対して、また世界に対して、重大な責務を担っているということに思いを致し、そして、そのような重大な責務を担った仕事に従事していることに、誇りと生き甲斐を持ち、責任を全うしていって頂きたいと思います。

次に、機構の理念を心に刻んで業務に取り組んでいただきたいということです。

原子力機構は、発足にあたり「原子力の未来を切り拓き、人類社会の福祉に貢献する」というミッションを定めました。これは、私たちは公的な研究開発機関として、エネルギーの安定確保ならびに地球環境問題解決への貢献、そして新たな科学技術や産業の創出を目指した研究開発を行い、その成果の社会への普及を通じて、人類社会の福祉に貢献することに存在意義があるということを示したものであります。

そして、その使命を果たすため、全役職員が共有すべき信条として、「高い志 豊かな発想 強い意志」という3つのスローガンを掲げました。

一人ひとりが、夢や希望をもって、入社されたことと思いますが、高い志、豊かな発想、強い意志をもって、事に臨めば、必ずや皆さんの夢は達成し得るものと確信しております。

皆さんは機構の新入職員として、機構の内外から大きな期待と注目を受けております。健康には十分注意をし、目標達成に向けて、皆さんの力を思う存分発揮し、職場にフレッシュな風を吹き込んでください。皆さん方のこれからのご活躍を心から祈念して、御祝の言葉と致します。

以上


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