平成20年4月1日

平成20年度職員入社式 理事長訓示

本日、若さ溢れ、前途洋々たる未来のある皆さんを、独立行政法人日本原子力研究開発機構にお迎えすることができたことは、私達にとって大きな喜びであり、役職員一同心から皆さんを歓迎するところであります。

日本原子力研究開発機構は、我が国で唯一にして最大の、原子力分野における総合的研究開発機関として、原子力の基礎・基盤から実用化を目指した巨大プロジェクトに至るまで、極めて幅広い領域を対象として研究・開発に取り組んでおります。

そして、それぞれの分野においては、先進性や独創性あるいは信頼性、経済性など、様々な角度から、質の高い成果が求められており、役職員全員が一致協力して努力を重ねているところでありますが、本日より、皆さんはその一員として参加されることとなり、共にその責任を果たしていきたいと思います。

皆さんをお迎えするに当たって、原子力を取り巻く環境に触れておきたいと思います。

まず、原子力を巡る国際環境の最大のポイントは、今年7月に開催される洞爺湖サミットへの取り組みがあると思います。この洞爺湖サミットでは、地球環境問題が最大の課題として取り上げられることと思いますが、COの発生の少ない原子力発電の重要性が改めて見直される良い機会になると思っております。

また、原油の値段が今年に入り100ドルを越えた状況下では、原子力発電の経済性が一段と優れ、環境の面からみても、エネルギー需給の面からみても、世界的規模で原子力が重要な役割を果たしていくことは間違いありません。

他方、国内の原子力を巡るトピックスとして、昨年7月、新潟中越沖地震によって、東京電力柏崎刈羽発電所に大きな被害が発生しました。

今回の地震は想定をはるかに越えるものではありましたが、幸いにも、安全性に関係する主要な機器・設備の健全性が保たれ、原子力発電所にとって重要な「止める」、「冷やす」、「閉じ込める」という安全機能が確保されたものの、原子力発電所の維持管理に多くの教訓を与えることになりました。

原子力に携わる者としては、これらの教訓を踏まえ、より適切な安全対策に当たっていかなければなりません。

このような原子力を取り巻く環境の中、今年度は、原子力機構が重点を置いて取り組んでいる事業のいずれも大変重要な段階を迎えようとしていることを申し上げたいと思います。

まず最初に、世界から注目される高速増殖炉「もんじゅ」が13年ぶりの運転再開を目指しており、量子ビーム研究の中核拠点となるJ-PARCが完成、供用が開始される予定です。更に、核融合分野におけるITER計画、幅広いアプローチ計画の本格的活動の開始、原子力にとって大きな課題である高レベル放射性廃棄物地層処分実現に向けた中核研究機関としての役割の遂行、が挙げられます。原子力機構発足以来2年半を経過したところですが、いよいよ機構の真価が問われると言っても過言ではないでしょう。このような大きな転機となると期待される年に、皆さんは原子力機構の一員として、先輩方と力を合わせて、これらの重要なミッション達成にチャレンジしていって頂きたいと思います。

ここで皆さんに、3つのお願いをしたいと思います。

第一は、原子力の研究開発という重要な役割を担う公的な研究開発機関で働くという使命感をしっかり持って臨んで頂きたいことです。組織を創り上げていく一人の人間として誇りを持ち、自らの足元をしっかりと確認し、未知の世界にチャレンジする勇気を持ち続けて欲しいと願っております。その姿勢こそがわが国ばかりでなく世界の原子力研究開発の未来を切り拓いていくものと考えます。

次に、原子力に携わるもの、謂わば原子力のプロとして、しっかりと安全と安心の確保に努めていただきたいことです。

安全の確保は、社会からの信頼の観点から最も基本であり重要なものであります。機構の業務は、社会からの信頼がなくては進めることができるものではなく、皆さん一人ひとりが、安全に対する重要性を強く自覚し、努めていただきたいと願っております。

最後に、機構の理念を心に刻んで業務に取り組んでいただきたいということです。

原子力機構は、発足にあたり機構のミッションを「原子力の未来を切り拓き、人類社会の福祉に貢献する」と定めました。

私たちは公的な研究開発機関として、エネルギーの安定確保ならびに地球環境問題解決のためへの貢献、そして新たな科学技術や産業の創出を目指した研究開発を行い、その成果の社会への普及を通じて、人類社会の福祉に貢献することに存在意義があるというものを示したものであります。

私たち一人ひとりが社会や国民に対して、また世界に対して、重大な責務を担っているということに思いを致し、そしてそのような重大な責務を担った仕事に従事していることに、誇りと生き甲斐を持ち、責任を全うして頂きたいと思います。

皆さんは一人ひとりがそれぞれの夢と抱負をもって、入社されたと思いますが、高い志、豊かな発想、強い意志をもって、事に臨めば、必ずや皆さんの夢は達成し得るものと確信しております。

皆さんは機構の新入職員として、機構の内外から大きな期待をもって注目を受けております。健康には十分注意を払いながら、皆さんの知恵と力を思う存分発揮され、今年の新人はひと味違うぞと言われるような、力強い活躍を心から祈念して、御祝の言葉と致します。ぜひ、皆さん、思い切ってがんばってください。

以上


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