H19.4.2
 
平成19年度職員入社式 理事長訓示
 
 本日、前途洋々たる未来を担う皆さんを、日本原子力研究開発機構にお迎えすることができたことは、私どもにとって大きな喜びであり、役職員一同心から皆さんを歓迎するところであります。

 この原子力機構を社会人としての活躍の場として選択した皆さんは、原子力の研究開発の魅力について、さまざまな形で頭の中に描いていらっしゃると思います。すでに今や地球の危機として警鐘を鳴らす学者もいる地球温暖化問題、また人類の発展のために不可欠なエネルギー資源問題、および新たな科学技術・産業の創成、これらのために人類にとって大きく貢献する科学技術の一つが原子力の研究開発であることを本日改めて認識していただきたいと思います。加えて、我が日本原子力研究開発機構は、我が国で唯一にして最大の、原子力に係る総合的研究開発機関として、原子力の基礎・基盤の研究分野から実用化を目指した大プロジェクトに至るまで、言い換えれば、科学(サイエンス)から技術(テクノロジー)、工学(エンジニアリング)の分野に至るまで、極めて幅広い領域を対象として研究・開発に取り組む組織であり、本日より、皆さんが我が国だけでなく、国際社会からも期待され、付託された重要な研究開発を担う一員となるということを自覚していただきたいと思います。

 皆さんが入社する1年半前に生まれたばかりの原子力機構ですが、幅広い研究開発分野において、先端性や独創性あるいは経済性など、質の高い成果が求められており、その各々の分野において世界に冠たる研究開発組織、つまり、COE(センター オブ エクセレンス)を目指すことが要請されているところであります。現在機構では、職員全員が一致協力して「世界一の研究開発法人」を目指して努力を重ねておりますが、今日を契機に皆さんも、この輪に連なって頂き、先輩達と一緒にこの目標の実現に努力して頂きたいと思っております。

 今日の原子力を取り巻く情勢を見渡してみると、我が国の原子力平和利用の開発がここ茨城県東海村から始まり、50年余りとなります。この間、原子力開発は必ずしも順風満帆で進んできたとは決して言えません。そういう中で昨年は、世界各国において原子力に回帰する動きが見られ、我が国においても「原子力政策大綱」で示された方針が、「原子力立国計画」などにより具体的な施策として示され、今後の開発の方向が明確に打ち出されました。いわゆる「原子力ルネッサンス」と呼ばれる新しい動きの中で原子力機構は生まれたと言ってもいいでしょう。非常に良い波に乗った船出が出来たと思いますし、原子力機構が取り組む、高速増殖炉サイクルシステム開発、核融合研究、量子ビームテクノロジー等の重要分野において、世界最先端の大規模プロジェクトが始まろうとしており、皆さんの活躍を待っています。しかし、最近の原子力界では、せっかく築き上げた国民の信頼を失墜する残念なことも生じています。我々自身も過去において、原子力においては安全が何よりも大事であり、その信頼無くしては原子力の存在があり得ない、ということを学び、あらゆる活動を用いて実践してきましたが、国民の安心を傷つけることがひとたび起これば、築いた信頼は一瞬にしてもろくも崩れてしまうのです。今後の機構を支える皆さんが今この原子力界に入られるにあたって、このことをまず頭に焼き付けていただきたいと思います。

 そんな皆さんの門出にあたり、さらに2つのお願いをしたいと思います。

 一つは、社会人としてプロフェッショナルという自覚を持って欲しいということです。
 これから皆さんは、先ずは社会人としての責任と倫理を活動の基本としつつ、さらに原子力の研究開発という重要な役割を担う公的な研究開発機関で働くという使命感を持っていただきたいと思います。そこには常に社会における大きな責任がついて回ります。今日の初心を忘れることなく、新しい組織を創り上げてゆく一人の人間として、「常に誇りを失わず」に、「未知の世界にチャレンジする勇気を持ち」、「プロとして自分の仕事に責任を持って取り組んでいくこと」と願っております。

 そして、つぎに、原子力機構の理念と基本方針を心に刻んで業務に取り組んでいただきたいということです。
 原子力機構は発足にあたり機構のミッションを「原子力の未来を切り拓き、人類社会の福祉に貢献する」と定めました。
 私たちは公的な研究開発機関として、エネルギーの安定確保ならびに地球環境問題解決のためへの貢献、そして新しい科学技術や産業の創出を目指した研究開発を行い、その成果普及を通じて、人類社会の福祉に貢献することを機構設立の理念とするとともに、○安全確保の徹底、○創造性あふれる研究開発、○現場の重視、○効率的な業務運営、○社会からの信頼、の五つの基本方針を示しました。

 皆さんは一人一人が夢と抱負をもって、入社されたと思いますが、その実現のためには、高い志、豊かな発想とそして強い意志をもって、事に臨めば、必ずや皆さんの夢は叶えられ、原子力のプロフェッショナルとして人類に貢献できるものと確信しております。

 最後になりますが、充実した人生を過ごすためには、心技体のバランスが重要です。心と体のバランスが取れてこそ、立派な技術が磨かれることになると思います。困ったことがあれば、回りにたくさんの先輩が見守ってくれています。気軽に相談してください。くれぐれも健康に留意されながら、毎日の業務に楽しく、精励されることを期待いたします。

 皆さんのご活躍を心から祈念し、御祝の言葉と致します。

 
以 上

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