・ | スウェーデン:オスカーシャム、フィンランド:オルキルオト、フランス:マルゴー及びカダラッシュ |
・ | 平成18年5月3日〜13日 |
1) |
フランスおよび日本の原子力専門家からなるグループN-20は、第13回会合を2006年5月9〜10日、フランスのマルゴーで開催した。2日間の会合において、日仏双方の専門家は次のテーマについて情報と意見の交換を行った。 ・原子力計画の現状、・原子力国際問題、・将来の原子力システム、 ・放射性物質の輸送、・短中期の原子力の課題 |
2) | 双方は、温室効果ガスを排出せず、世界のエネルギーセキュリティーを改善し、しかも競争力のある技術である原子力エネルギーのルネッサンスを指摘した。この長所は、京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)等において、原子力の開発を容易にする措置を通じて、考慮されるべきである。 |
3) | 原子力開発の推進においては、情報公開を完全に実施することにより社会からの理解を促進することが不可欠である。様々な原子力関係者は、原子力発電の社会に対する有効性及び重要性・意義について、確実に且つ時機を逸せずに、国民、特に指導者層や世論形成者等に、情報提供すべきである。公益性の高い原子力技術開発を担う原子力関係者には、旺盛な企業家精神と高い社会的責任感が求められる。 |
4) |
フランス側からは、下記の出来事が強調された。 − 規制の枠組みに関する動向: ・放射性物質及び廃棄物の管理に関する法案。同法案は既に閣議に提出され、夏までに議会で審議される予定。 ・原子力の透明性とセキュリティーに関する法案。同法案は、原子力活動の管理のための新しい法的枠組みを定めるものである。 − 産業面では、EPR(欧州加圧水型炉)をフラマンビル・サイトに建設する決定。 |
5) | 原子力エネルギーの国際的側面に関して、双方は、米国提案のGNEP(国際原子力エネルギーパートナーシップ)を、米国の核燃料サイクル政策の重大な転換として、さらに核不拡散を強化しながら、原子力発電の世界的な開発利用を増進させる新たなイニシアティブとして歓迎した。このイニシアティブは、GEN IV(第4世代原子力発電システム)と同じ技術基盤に依存している。日仏の双方は、原子力システムの開発に必要で両方のイニシアティブに一致するR&Dのために、緊密な国際協力を支持する。 |
6) | 日本側は、FR(高速炉)サイクルを効果的に開発するためには、グローバル・スタンダードを確立し、R&Dを共有することが重要であると説明した。ナトリウム冷却高速炉と超ウラン元素・リサイクルシステムが最適な共同R&D候補として指摘された。専門家は、スタンダードの確立のために技術分野での意見の一致に努力しなければならない。フランスは、2006年1月5日、GEN IVのプロトタイプ炉の開発に着手し、2020年迄に運転させることを発表した。日本及びフランスの将来の原子力システム開発のロードマップは、整合の取れたものである。日仏の双方は、それらを調和させるために、協力することを決定した。 |
7) | 日本とフランスは共に、産業規模の再処理プラントを運転している。フランスの関係者は、六ヶ所村の再処理工場が成功裏に試運転を開始したことを祝福した。日本原燃(JNFL)は、フランス政府とアレバ(AREVA)からの温かい支援に対し感謝した。日本原燃は、3月31日、待望のアクティブ試験を開始し、同社の燃料サイクル活動に関する情報を更新した。日本原燃は、再処理工場を、透明性の下に運転し、日本の原子力政策の長年の伝統に従って、原子力平和利用の模範とする意図を表明した。フランス側は、既存プラントから将来のGEN IVシステムへの移行についての提案を行った。これによって、実証技術に依存しながら、エネルギーセキュリティー、廃棄物管理のための処分場及び核拡散抵抗性の一層の最適化が可能になるとしている。 |
8) | フランス側は、フランスの原子力発電所群の寿命延長を考慮すると、原子力発電所の更新は2015〜2020頃に始まり、建設される原子炉は、進化型の成熟したPWR(例えばEPR)に基づくだろうと述べた。一方、日本では、機器の保全プログラムが適切に実施されるならば、原子力発電所は60年間の運転が期待されている。日本政府は既に、9基の原子力発電所について、60年間、安全で信頼性のある運転が出来るとの評価をしている。今後は、安全文化の継続的な向上を維持するような運転・保守システムが求められる。 |
9) | 開発途上国のために、原子力発電所プロジェクトのための適切な枠組みが必要である。この枠組みには、教育、安全、組織だけでなく、核不拡散、セキュリティー、環境保護の考慮も含まれる。日仏の双方は、そのような枠組みの構築を支援し、例えば中小型原子炉の適合技術の研究に貢献する。中小型原子炉は、ベースロードの電力供給(LWR或いは小型モジュール高速炉)或いはプロセスヒート供給(HTR)に用いられる。 |
10) | 廃棄物管理ワーキンググループは、廃棄物管理手順の経験や研究所での成果について、効率的に交流を行った。経済性ワーキンググループについては、コスト比較評価を開始し、共通の方法論に基づいて、新しい解析を提示していく予定である。戦略問題について議論した結果、必要に応じて、両国の見解を調和ある形で提案できるように、相互に迅速に対応する連絡窓口(fast reaction link)を設置することになった。 |
(1) | 地下研究施設HRLにおける研究を10年以上実施しているスウェーデンや最終処分場につながる地下特性調査施設ONKALOを建設中のフィンランドは、高レベル廃棄物の地層処分では世界の最先進国である。国や地方自治体レベルでの公衆の支持が高いことが特筆される。計画的かつ順調な進展、地下施設の壮大さや関係者の意欲と自信に満ちた説明ぶりが印象的であり、両国の経験に学ぶべき点が多いと痛感した。 |
(2) | フィンランドのオルキルオト3号機の建設現場では、約20ヶ国からの外国人を含め約500人が働いており、活気が漲っていた。開発に巨費を投じた世界最大出力のEPR初号機ということもあり、関係者の言葉の端々から意欲と誇りが感じられた。フィンランドでは既に6号機建設の議論も始まっており、スウェーデンでも長らく続いた脱原子力政策からの転機ともなる新原子力システムに関する研究許可が議会で決定されるなど、両国における新しい原子力の動きを肌で感じた。 |
(3) | 地層処分について、スウェーデンSKB社との協力協定を2007年以降も継続すること、フィンランドPOSIVA社とは新たな協定を結ぶ方向で検討することで基本的な合意を得た。 |
(4) | 第13回日仏専門家会合(N-20)が平成18年5月9、10日に仏のマルゴーで開催された。日仏双方は技術的に競争力があり、温室効果ガスを排出せず世界的なエネルギーセキュリティーを改善する原子力開発のルネサンスを確認した。これらの長所は京都議定書のCDM等において原子力の開発を容易にする措置を講ずることにより考慮されるべきだと指摘した。 また、GNEPを米国の核燃料サイクル政策への大きな転換と位置づけ、核不拡散を強化しつつ世界的な原子力発電体系を開発し且つ拡大するものとして歓迎し、日仏双方は原子力システムの開発及びGENE IVとGNEPの両方に整合性のあるR&Dの国際的な組織化を支援することとした。 日本側より、高速炉サイクルの効果的な開発には国際標準を確立し、R&Dを分担する事の必要性を提案した。その標準の確立のために、技術分野におけるコンセンサス作りの努力の必要性が指摘された。ナトリウム冷却炉とTRUリサイクルシステムがもっとも適切な候補とされた。日仏の将来炉システム開発のロードマップはお互いに整合性があり、双方の計画を調和させるために協力することで合意した。 |
(5) | ITERに関しては、池田機構長候補の補佐としてドイツ人のNorbert R. Holtkamp氏が選出され、ITER機構へのスムースな移行の準備を行っている。 |