平成18年5月15日
理事長外国出張報告
(スウェーデン、フィンランド、フランス)


1. 目的
 スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)の「使用済燃料貯蔵施設」と「地下研究施設」及びフィンランドのPOSIVA社が建設を進めている高レベル放射性廃棄物の最終処分場につながる「地下特性調査施設」を視察するとともに、フランスのマルゴーで開催される第13回日・仏原子力専門家会合(N-20)に出席して、今後の原子力開発の進め方を討議する。加えて、仏原子力庁のカダラッシュ研究所を訪問し、ITERサイトの現状等を視察する。


2. 出張先、日程
    ・ スウェーデン:オスカーシャム、フィンランド:オルキルオト、フランス:マルゴー及びカダラッシュ
    ・ 平成18年5月3日〜13日


3. 概要
3.1スウェーデン
(1)SKB社の使用済燃料中間貯蔵施設
 スウェーデンでは、使用済燃料を国内の結晶質岩中に直接処分(地層処分)する政策を取っている。スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)は、原子力法に基づき原子力発電所を所有する4電力会社により1972年に設立された。本社はストックホルムにあり従業員約160名で、予算は電力料金から徴収された基金より政府の承認を得て充当し、国家予算からの支出はない。同社の有する主要施設として、中・低レベル放射性廃棄物最終処分場(SFR)、使用済燃料中間貯蔵施設(CLAB)、地下研究施設(HRL)がある。
 CLABは、オスカーシャム原子力発電所の敷地内に設けられており、地下約60mにある岩盤内空洞を利用した水プール方式である。発電所で1年間冷却した後、CLABで30年〜40年間貯蔵する。1980年に建設を開始し、1985年より運転を行っている。貯蔵容量は約10,000トンで、年間240トンの受入が可能である。従業員は約75名おり、全員が専門職である。建設費は17億クローネ(約255億円)、運転費用は年間7,500万クローネ(約11億円)とのこと。


(2)SKB社の地下研究施設(HRL: Hard Rock Laboratory)
 スウェーデンにおける高レベル廃棄物の地層処分場のコンセプトは、使用済燃料を鋳鉄インサートに挿入し、銅で被覆したキャニスター内に入れて外周をベントナイトで包み、深さ約500mの結晶質岩の岩盤に設置するというもの。処分場の設計および適切なサイト選定を目的とした科学的研究のため、1986年にSKBによりエスポ島における実地調査を開始し、1988年の終わりには建設を決定した。事前調査段階(1986〜1990年)、地下の研究施設の建設を伴う試験研究段階(1990〜1995年)、及び地下の研究施設を利用した試験研究段階(1995年〜)の三段階を経て現在に至っている。
地下施設内の視察 SKBの地下実験施設で地中埋設法の説明を受ける殿塚理事長
 HRLの役割は、処分場性能評価に対する評価基準等の提供、調査・建設・処分のための方法の開発・試験・評価、及びスタッフの経験と訓練の場を提供し、技術的目標達成とそれによる技術者の自信を醸成する事である。研究施設の地下部分は、スパイラル状の斜坑が深さ460mまで達しており、坑道の総延長は3,600mである。主な施設は、100名が居住できる空間、220m〜420mレベルの主実験場、420mレベルにおける救急室/会議室、化学実験室、岩石視覚化システム等である。職員55名、コンサルタント45名、外部プロジェクトマネージャー25名等が関与しており、運転経費は年間約2億クローネ(約30億円)である。
 現在、技術工学バリア系の試験として、プロトタイプ貯蔵、埋め戻し・プラグ試験、キャニスター回収可能性試験、ミニキャニスターの腐食試験など約50件の試験を実施している。キャニスター回収試験は、将来埋設した使用済燃料を回収する場合に備え、その技術的成立性を実証するもの。HRLを将来処分地とはしないことを地元に約束しており、実際の使用済燃料は使用せずRIトレーサーを利用している。今後は、2006年にカプセル化プラントの建設申請を提出する。
 最終処分場としてはオスカーシャムとフォルスマルクの2ヶ所が候補に挙がっており、現在調査中である。2008年に最終処分場の建設申請を提出する予定で、規制当局の審査、政府の決定を経て、2017年から最終処分を開始することとしている。
 国際共同研究には、フランスのAndra、ドイツのBMWi、日本のJAEA及び電力中央研究所(電中研)、カナダのOPG、フィンランドのPOSIVA、スイスのNagra、チェコのRAWRAなど8ヵ国の関係機関が参加している。旧核燃料サイクル開発機構(JNC)は1991年より共同研究に参加し、現在は、SKB、JAEA、電中研3者による地下研究所における廃棄物管理共同研究協定があるが、2006年12月末で期限が切れる。重要な研究開発課題であることから、2007年以降も引き続き協力を強化することに基本的に合意し、そのための手続きを進めることとした。
 広報活動として、施設見学(2005年に約11,000人、うち1,500人が外国から)、夏期特別ツアー、イベント、展示、印刷物の配布、Web等による広報を実施している。さらに次世代層を対象とする講義や施設見学、住民との対話活動などの努力の結果、地方自治体レベルでの原子力支持は約80%となっている。


3.2 フィンランド
(1)POSIVA社の訪問
 POSIVA社は、オルキルオト原発を所有するTVO社及びロヴィーサ原発を所有するFPHO社が協同出資(各60%及び40%)して1995年に設立された。事業目的は、使用済燃料から発生する高レベル放射性廃棄物をフィンランド内で最終処分することである。従業員は約60名で、予算は2005年が3,000万ユーロ、2006年が4,000万ユーロである。1999年にオルキルオトを最終処分場として選定・申請し、2001年には原則決定を議会が承認すると同時に調査開始を許可した。今後、地下特性調査施設(ONKALO)を含めた詳細調査、2012年を目標に建設許可を申請、2018年に運転許可を取得するという三段階を踏むことになっている。
 処分場のコンセプトはスウェーデンのSKBが検討している概念とほぼ同じで、使用済燃料を鋳鉄インサートに挿入し、銅で被覆したキャニスター外周をベントナイトで包み、地下500mの花崗岩岩盤中に設置する。ここ5年程はSKBとの緊密な協力の下に進めることにより、研究の加速・効率化を図っている。
 処分費用は25億ユーロを想定しており、EPR(欧州加圧水型炉)の建設費30億ユーロに比べれば安価との説明があった。そのため、TVO社とFPHO社が毎年基金を積み立てている。2006年現在で約16億ユーロを積み立て済みで、100年後まで資金の見通しがある。
 ONKALOでは、オルキルオト地区のボーリング調査に基づき、2004年より掘削を開始し、2006年5月5日現在、アクセス坑道1,042mまで掘り進めていて、2009年に地下420mの特性調査坑道まで達する予定である。研究開発や設計研究の成果に基づき、2012年に上記建設許可を申請する。将来的には処分施設の一部としての利用が予定されている。我々は坑道掘削現場の最先端まで車で移動して視察した。斜度は約10%で、一週間で25〜40m程度掘削が進む。ここでは漏水が極めて少ないのが利点であるが、常設の照明がない暗い中で作業を進めていたのが印象的であった。
 フィンランドにおける公衆の原子力への支持は、昨年の42%から最近では62%に急上昇しており、エネルギー価格急騰、ロシアからの電力輸入依存への警戒、地球温暖化への配慮が主な理由と分析されている。廃棄物処分場についても、オルキルオトと他の自治体が誘致を競い合うなど、国レベル、自治体レベルで支持がある。広報活動として、スウェーデンのSKBと同様、小学生レベルの講義と見学、関係者との直接の対話を心掛けているが、2001年の9.11テロ以来、一般見学者への制限が厳しくなっており、リスクコミュニケーションの観点からの懸念があるとのこと。
 POSIVA社とJAEAとの研究協力については、これまで旧JNCと研究協力の可能性が検討されて来たが、オルキルオト及びJAEAの地下研究施設の建設が進展していることを考慮すると、研究協力は双方に大きなメリットがあることから、担当者レベルで研究協力協定を締結する方向で検討することとした。


オルキルオト3号機(EPR,160万kW)建設現場 (2)TVO社のオルキルオト原子力発電所3号機建設現場
 TVO社のオルキルオト原子力発電所3号機はフランスのフラマトムANP社とドイツのシーメンス社のコンソーシアムが受注したEPR(欧州加圧水炉)の世界初号機で、2002年5月に議会の採決を経て建設が承認され、2005年8月に着工された。出力160万kWは世界最大である。EPRは、シビアアクシデント対策や二重製格納容器など高度な安全レベルを実現した設計を有し、発電コスト低減、環境保護、及び廃棄物排出量の最少化等においても大きな改善がなされている。原子炉圧力容器は日本の三菱重工、蒸気発生器はフランスのフラマトムANP社でそれぞれ製作中である。
 3号機の設置場所は、ツインで並んだ1、2号機からさらに岬の先端部分にある。約20ヶ国からの労働者約500人が建設に携わっている。コンクリートの注入固化や関連施設の建設が活発に行われており、格納容器は内側部分の最下部だけが作成されていた。2006年5月現在の進捗率は約2割であるが、2009年中の完成予定は変わらないとしている。


3.3 第13回日仏原子力専門家会合(N-20)
 本会合はボルドー北西のマルゴーで5月9、10日に開催され、以下の主な出席者があった。
仏 側:ビュガ仏原子力庁(CEA)長官、ブシャールCEA特別顧問、プラデルCEA原子力局長、マイヤール経済産業省資源エネルギー局長、レスケールEdF国際協力担当副社長、デュプラEdF発電担当副社長、ベスネノAREVA燃料サイクル担当副社長、エステヴ北米AREVA社長
日本側:秋元三菱マテリアル名誉顧問、柳瀬経産省原子力政策課長、小溝外務省国際原子力協力課長、殿塚JAEA理事長、桝本電事連副会長、兒島日本原燃社長、宅間原産協会副会長、松下九州電力顧問、太田四国電力副社長、松村関西電力顧問、庭野東芝執行役専務
 議題として、1)国家政策の現状、2)原子力に関する国際問題、3)将来の原子力システム(原子炉及び燃料サイクル)、4)放射性物質の国際間輸送、5)短中期の原子力問題、6)経済性及び廃棄物ワーキンググループ報告の6項目が取り上げられ、討議された。その内容は以下の共同声明文に纏められ、プレス発表された。

    N-20共同声明文
    1) フランスおよび日本の原子力専門家からなるグループN-20は、第13回会合を2006年5月9〜10日、フランスのマルゴーで開催した。2日間の会合において、日仏双方の専門家は次のテーマについて情報と意見の交換を行った。
 ・原子力計画の現状、・原子力国際問題、・将来の原子力システム、
 ・放射性物質の輸送、・短中期の原子力の課題
    2) 双方は、温室効果ガスを排出せず、世界のエネルギーセキュリティーを改善し、しかも競争力のある技術である原子力エネルギーのルネッサンスを指摘した。この長所は、京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)等において、原子力の開発を容易にする措置を通じて、考慮されるべきである。
    3) 原子力開発の推進においては、情報公開を完全に実施することにより社会からの理解を促進することが不可欠である。様々な原子力関係者は、原子力発電の社会に対する有効性及び重要性・意義について、確実に且つ時機を逸せずに、国民、特に指導者層や世論形成者等に、情報提供すべきである。公益性の高い原子力技術開発を担う原子力関係者には、旺盛な企業家精神と高い社会的責任感が求められる。
    4) フランス側からは、下記の出来事が強調された。
− 規制の枠組みに関する動向:
 ・放射性物質及び廃棄物の管理に関する法案。同法案は既に閣議に提出され、夏までに議会で審議される予定。
 ・原子力の透明性とセキュリティーに関する法案。同法案は、原子力活動の管理のための新しい法的枠組みを定めるものである。
− 産業面では、EPR(欧州加圧水型炉)をフラマンビル・サイトに建設する決定。
    5) 原子力エネルギーの国際的側面に関して、双方は、米国提案のGNEP(国際原子力エネルギーパートナーシップ)を、米国の核燃料サイクル政策の重大な転換として、さらに核不拡散を強化しながら、原子力発電の世界的な開発利用を増進させる新たなイニシアティブとして歓迎した。このイニシアティブは、GEN IV(第4世代原子力発電システム)と同じ技術基盤に依存している。日仏の双方は、原子力システムの開発に必要で両方のイニシアティブに一致するR&Dのために、緊密な国際協力を支持する。
    6) 日本側は、FR(高速炉)サイクルを効果的に開発するためには、グローバル・スタンダードを確立し、R&Dを共有することが重要であると説明した。ナトリウム冷却高速炉と超ウラン元素・リサイクルシステムが最適な共同R&D候補として指摘された。専門家は、スタンダードの確立のために技術分野での意見の一致に努力しなければならない。フランスは、2006年1月5日、GEN IVのプロトタイプ炉の開発に着手し、2020年迄に運転させることを発表した。日本及びフランスの将来の原子力システム開発のロードマップは、整合の取れたものである。日仏の双方は、それらを調和させるために、協力することを決定した。
    7) 日本とフランスは共に、産業規模の再処理プラントを運転している。フランスの関係者は、六ヶ所村の再処理工場が成功裏に試運転を開始したことを祝福した。日本原燃(JNFL)は、フランス政府とアレバ(AREVA)からの温かい支援に対し感謝した。日本原燃は、3月31日、待望のアクティブ試験を開始し、同社の燃料サイクル活動に関する情報を更新した。日本原燃は、再処理工場を、透明性の下に運転し、日本の原子力政策の長年の伝統に従って、原子力平和利用の模範とする意図を表明した。フランス側は、既存プラントから将来のGEN IVシステムへの移行についての提案を行った。これによって、実証技術に依存しながら、エネルギーセキュリティー、廃棄物管理のための処分場及び核拡散抵抗性の一層の最適化が可能になるとしている。
    8) フランス側は、フランスの原子力発電所群の寿命延長を考慮すると、原子力発電所の更新は2015〜2020頃に始まり、建設される原子炉は、進化型の成熟したPWR(例えばEPR)に基づくだろうと述べた。一方、日本では、機器の保全プログラムが適切に実施されるならば、原子力発電所は60年間の運転が期待されている。日本政府は既に、9基の原子力発電所について、60年間、安全で信頼性のある運転が出来るとの評価をしている。今後は、安全文化の継続的な向上を維持するような運転・保守システムが求められる。
    9) 開発途上国のために、原子力発電所プロジェクトのための適切な枠組みが必要である。この枠組みには、教育、安全、組織だけでなく、核不拡散、セキュリティー、環境保護の考慮も含まれる。日仏の双方は、そのような枠組みの構築を支援し、例えば中小型原子炉の適合技術の研究に貢献する。中小型原子炉は、ベースロードの電力供給(LWR或いは小型モジュール高速炉)或いはプロセスヒート供給(HTR)に用いられる。
    10) 廃棄物管理ワーキンググループは、廃棄物管理手順の経験や研究所での成果について、効率的に交流を行った。経済性ワーキンググループについては、コスト比較評価を開始し、共通の方法論に基づいて、新しい解析を提示していく予定である。戦略問題について議論した結果、必要に応じて、両国の見解を調和ある形で提案できるように、相互に迅速に対応する連絡窓口(fast reaction link)を設置することになった。


3.4 仏原子力庁(CEA)カダラッシュ研究所訪問
 本研究所は1959年に設立され、450の施設に約4,300名が勤務している。主な研究開発項目は、原子炉、新型燃料、原子力施設の安全、中・低レベル放射性廃棄物の処理・貯蔵・処分、植物生態学、微生物学、核融合である。今回の訪問では、ITERの池田機構長候補を訪問するとともに、ITERサイト等を視察した。なお、カダラッシュ研究所は、ITERの誘致に伴い、これまでのPascale Amenc-Antoni所長は、ITER専任の所長となり、新たにSerge Durand氏が所長に就任した。
ITER建設予定地でサイトレイアウトの説明を受ける殿塚理事長 (1)ITER
 副機構長候補として約400名の応募者の中から、ドイツ人で米国ORNLの核破砕中性子源(SNS)建設の責任者であるNorbert R. Holtkamp氏が選出された。現在、ガルヒンク及び那珂サイトでの活動の状況把握を行いつつ、ITER機構へのスムースな移行準備を行っている。
 ITER専用のオフィスは6月末に完成する予定で、食事もこの中で出来るようになる。国際学校はフランスの国立学校としてマノスクに設置され、ITER参加国の全ての国の言葉が学習できるようにするとともに、この学校の卒業生は参加国のどの大学へも入れるようにするとのことである。
 ITERの公聴会は、これまで18回実施して来ている。ITERの誘致に当たって、周辺の6つの県議会は、周辺のインフラ整備にITER建設費の10%相当を負担することに合意した。なお、ITER誘致の地方への経済効果は経済学者も参加して評価され、投資額の3倍になるという結果を得ていたとのことである。


(2)CABRI炉
 本施設は原子炉の安全性試験を実施することを目的に1963年に稼動し、以来約35年間にわたってナトリウムループを使った高速炉の炉心事故時の燃料挙動を観察する安全性試験を実施してきた。高速炉の安全性試験が終了したことから、6、7年前より、CEAがナトリウムループの代わりに水ループ(PWR模擬)を設置するためのCABRI炉の改造を実施している。現在、2001年に改定された耐震基準に適合させるための大規模な改造を実施中で、2008年には一連の改造工事を終了させる予定である。工事は約30社が関与しており、基本的にはCEAが工事会社と直接契約し、工程管理も行っている。2008年の改造工事終了後は、IRSNが策定した軽水炉(PWR)の炉心安全性試験(LOCA模擬)を実施する予定となっている。本計画には、米国、ドイツ、英国、ロシア他10カ国が参加しており、JAEAは、旧JAERI(日本原子力研究所)が2005年9月に協定を締結している。


4.まとめ
 (1) 地下研究施設HRLにおける研究を10年以上実施しているスウェーデンや最終処分場につながる地下特性調査施設ONKALOを建設中のフィンランドは、高レベル廃棄物の地層処分では世界の最先進国である。国や地方自治体レベルでの公衆の支持が高いことが特筆される。計画的かつ順調な進展、地下施設の壮大さや関係者の意欲と自信に満ちた説明ぶりが印象的であり、両国の経験に学ぶべき点が多いと痛感した。
 (2) フィンランドのオルキルオト3号機の建設現場では、約20ヶ国からの外国人を含め約500人が働いており、活気が漲っていた。開発に巨費を投じた世界最大出力のEPR初号機ということもあり、関係者の言葉の端々から意欲と誇りが感じられた。フィンランドでは既に6号機建設の議論も始まっており、スウェーデンでも長らく続いた脱原子力政策からの転機ともなる新原子力システムに関する研究許可が議会で決定されるなど、両国における新しい原子力の動きを肌で感じた。
 (3) 地層処分について、スウェーデンSKB社との協力協定を2007年以降も継続すること、フィンランドPOSIVA社とは新たな協定を結ぶ方向で検討することで基本的な合意を得た。
 (4) 第13回日仏専門家会合(N-20)が平成18年5月9、10日に仏のマルゴーで開催された。日仏双方は技術的に競争力があり、温室効果ガスを排出せず世界的なエネルギーセキュリティーを改善する原子力開発のルネサンスを確認した。これらの長所は京都議定書のCDM等において原子力の開発を容易にする措置を講ずることにより考慮されるべきだと指摘した。
 また、GNEPを米国の核燃料サイクル政策への大きな転換と位置づけ、核不拡散を強化しつつ世界的な原子力発電体系を開発し且つ拡大するものとして歓迎し、日仏双方は原子力システムの開発及びGENE IVとGNEPの両方に整合性のあるR&Dの国際的な組織化を支援することとした。
 日本側より、高速炉サイクルの効果的な開発には国際標準を確立し、R&Dを分担する事の必要性を提案した。その標準の確立のために、技術分野におけるコンセンサス作りの努力の必要性が指摘された。ナトリウム冷却炉とTRUリサイクルシステムがもっとも適切な候補とされた。日仏の将来炉システム開発のロードマップはお互いに整合性があり、双方の計画を調和させるために協力することで合意した。
 (5) ITERに関しては、池田機構長候補の補佐としてドイツ人のNorbert R. Holtkamp氏が選出され、ITER機構へのスムースな移行の準備を行っている。
以上

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